慢性疲労とはミトコンドリア機能の低下
疲れやすい、寝ても疲れがとれない。
こういった「慢性疲労」にはどう対処するべきでしょうか?
エネルギーの元は「ATP」です。
たくさんのATPを作り出す「クエン酸回路」は、ミトコンドリアの中で行われます。
言うなれば、疲れやすいとは、ミトコンドリアが機能不全に陥り、ATP(エネルギー)の生産に支障が出ている状態です。
分子栄養学・栄養療法における慢性疲労の治療とは、ミトコンドリア機能を回復させることを焦点とします。
ミトコンドリア機能不全の治療法となる、3つのアプローチ法を簡単にまとめました。
1. ミトコンドリアの邪魔者を退治する
重金属デトックス
そもそもの前提として、ミトコンドリアは大変弱っちい生き物で、薬物や毒素の影響を受けやすいのです。
水銀、鉛、カドミウムに代表される有害重金属が側にいるだけで、ミトコンドリアは本来の機能を発揮できません。
カジキ、マグロ、ブリなど、食物連鎖の上位にいる大型魚は、海洋汚染の影響を受けやすいので、毎日食べない。食べるなら、鯵、鰯などの小型魚。
体内に入ってしまった重金属をキレーション(掃除)するためには、
・食物繊維を多く食べること
・硫黄を含む野菜(キャベツ、玉ねぎ、大根など)を食べること
・便秘をしないこと
ちなみに我が家の’食卓キレーション’は「らっきょう」です。笑
リーキーガット対策「らっきょう」の抗カンジダ作用・整腸作用がすばらしい件 | ビタミンアカデミー
カンジダ除菌
腸カンジダの出す有機酸や毒素が、ミトコンドリア機能を低下させます。
カンジダ菌は、腸粘膜のヒアルロン酸を食べて傷をつけますので、リーキーガットを悪化させます。
リーキーガットを起こすことで、有害物質の体内への侵入を許すことになり、ミトコンドリアの機能が低下します。
ミトコンドリア機能の回復のためにも、以下のような腸内環境アプローチはとても重要です。
・プレバイオティクス(ポテトスターチ、食物繊維)
・プロバイオティクス(ぬか漬け、味噌、乳酸菌サプリメント)
・殺菌効果のあるハーブ(オレガノ)やココナッツオイル
2. ミトコンドリアを賦活させる
邪魔者を退治したら、ミトコンドリアに応援を送ります。
ミトコンドリア機能サポートに使用するのは、主に以下の栄養素です。
・ビタミンB
・鉄
・マグネシウム
・CoQ10
・グルタチオン
ビタミンBは、クエン酸回路を回すあらゆる過程で必要です。
個人的な体感ですが、ビタミンBのサプリメントを切らすととたんに疲れやすくなります。
鉄が不足すれば、クエン酸回路は回りませんので、特に有経の女性は貧血の治療が必須です。
マグネシウムは、にがり、ぬちまーす、エプソムソルトあたりで十分回せるかと。
CoQ10は、ATP産生過程で働く補酵素ですが、加齢とともに減少が顕著です。
だからサプリメントで補給することで効果を感じる人が多いのでしょうね。
CoQ10のサプリメントは酸化型CoQ10がほとんどですが、体内で還元型CoQ10とならないと効果は出ません。体内変換のロスが生じないので、当然還元型CoQ10のほうが効率が良くなります。
還元型CoQ10の商品名は「ユビキノール」です。
還元型は安定性がないので、その辺が特殊技術になるようで、かなりお高いのが難点。
Healthy Origins, ユビキノール ( Kaneka QH )、300 mg、ソフトジェル30錠
ちなみに、CoQ10はアメリカで発見されましたが、還元型CoQ10の「ユビキノール」を開発をしたのは日本の会社です。
テレ東のWBSを見てるとくどいほどCMが入るため、歌が耳に残るあの会社。
グルタチオンは体内に存在する抗酸化物質、デトックス機能を持つタンパク質ですが、治療においてはグルタチオン点滴がもっとも効果が高くなります。
グルタチオンの経口摂取はあまり意味がありません。サプリメントで補給するのであれば、吸収率を向上させた「リポゾーム型グルタチオン」が良いと言われています。
LypriCel, リポソームGSH、 30包、 各0.2液量オンス (5.4 ml)
3. ミトコンドリアを増やす
ミトコンドリアの邪魔者の退治して、ミトコンドリアに応援団を送る、これらは元々存在するミトコンドリアに対して行うアプローチでした。3つめは、ミトコンドリアそのものを増やす方法です。
ミトコンドリア自体を増やすのは「運動」と「断食」です。
運動(HIIT)
ミトコンドリアを増やす最も効率的な運動方法ですが、これは数々の研究結果ですでに結論が出ております。それは「インターバル法」です。
ちょっと専門的な用語では「HIIT」と言います。
英語で「High intensity interval training」の略、日本語では「高強度インターバルトレーニング」と言うらしいですが、健康クラスタ界隈ではそのまま略語で「HIIT」と言うほうが一般的です。ちなみに「ヒート」と発音します。
HIITの具体的な方法ですが、
1, 息があがるような限界ギリギリの運動を数分間続ける
2, 心拍数が戻るまで少し休む
3, 再び限界ギリギリの運動を数分間
4, 再び少し休む
これを、4回から5回、繰り返す方法です。
例えば、負荷そこそこのランニングを、同じペースで3km走る運動では、あまりミトコンドリアは増えませんが、「全速力→休む→全速力→休む」を1kmやったほうがミトコンドリアは確実に増加します。
筋トレなど無酸素運動は、活性酸素を発生させるとして、心臓に負担にならないウォーキングなどの軽い運動がよいとされてきた風潮がありました。しかし、ここ数年「無酸素運動もメリットが多い!」とされてます。上手に組み合わせて取り入れたいところです。
高齢者の視聴者が多いNHKでは、まさか全速疾走をお勧めするわけがなく、
「早歩き3分間→ゆっくり歩き3分間」×5回(計30分)を週に4日以上と提案しておりました。これなら運動の習慣がない人でも簡単に出来そうです。
いずれにせよ、心臓がドキドキするくらいの、ある程度の負荷がかかる時にミトコンドリアが増えると覚えておくこと。
断食(ファスティング)
断食というと大げさですが、日常的にできるファスティングとして「IF」が一番効果的にミトコンドリア賦活作用があるといわれています。
「IF」とは、Intermittent Fastingの略。
インターミッタント(間欠的)ファスティング(断食)
これは、日々の生活の中で、ファスティングする12時間〜16時間を設けるというもの。
例えば、夜7時に食事を終えたら、翌朝7時まで食べ物を口にしない、といった毎日のファイスティングです。
空腹感、飢餓感がミトコンドリアを増やし、細胞の大掃除「オートファジー」を活性化させます。
副腎機能に問題がなく、低血糖症でなければ、プチ断食は効果があると思います。
自分のミトコンドリア機能を知る目安
「疲れ」という症状は、本人の主訴のみに頼っており、症状を知るベンチマーク的なものが存在しませんでした。
最近では、有機酸尿検査といったようなバイオロジカル検査で、ミトコンドリア機能の数値化が可能になってます。
しかし一般的ではなく、かなりお高いです(4〜5万円)
もっと簡単に見分ける方法としては、健康診断で出る「AST/ALT」の値が参考になります。
ミトコンドリアの多い臓器は心臓、肝臓、脳です。
ASTは、心臓に多く存在する酵素
ALTは、肝臓に多く存在する酵素
妙にAST/ALTの値が低い場合は、酵素の活性が悪い、すなわちミトコンドリア機能が落ちていることが推測されます。
毎日飲酒をし、脂っこいものが好きな人が、平均的な「AST/ALT」の値に収まっている場合も、マスキングを疑います。
ちなみに私は「妙に低いタイプ」です。
健康診断では高値しか指摘を受けないため「健康」のお墨付きをもらうことになりますが、本人は「疲れやすい」といった不定愁訴を抱えることになるのでややこしい。
このタイプが症状が進行し疲労感を抱えて病院(内科)に行くと、通常の血液検査ではエラーが出ませんから心療内科へ回されます。こういう人にとって、分子栄養学って最適だと思います。
データ解析は主訴と他の数値との総合判断になるので難しいのですが、ご興味があれば以下をご参照ください。
【栄養療法】ビタミンB6不足をAST/ALTの値で判断する | ビタミンアカデミー
【隠れ脂肪肝】タンパク質不足・糖質過多による肝臓の炎症をAST/ALTで診る | ビタミンアカデミー
疲れやすいの原因が、副腎や甲状腺など内分泌系にある場合もあり、一筋縄ではいかないのが慢性疲労の治療ですが、運動やサプリメントなどは、比較的簡単に取り入れられます。
どん底まで疲れてしまうと、運動する気力もなくなり治療手段が限られてきますので、せめて一晩寝れば疲労が取れるくらいのミトコンドリア状態をキープしたいところです。