遺伝子組み換え作物は危険なのか?健康上のリスクとは?

遺伝子組み換えで腫瘍が発生?

まず、遺伝子組み換えと言えば、この写真が有名です。

これ元々は、2012年に発表された、フランスの生物学科学者ジル・エリック・セラリーニ氏によるこちらの論文がソースです。

Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize

しかし、見ての通りこの論文は「retracted」、実験デザインに問題ありとして、論文取り下げになりました。

そもそも実験に使われたラットが、2年も飼育すると、高確率で腫瘍ができやすい種類らしい。しかも、実験個体数が少ない、比較対照群が不十分、などが批判の対象となりました。

ちょっと読んでみると、2年の給餌に使ったのが、遺伝子組み換えのトウモロコシとラウンドアップ(除草剤)の混合、という記載があったり。
だとしたら、除草剤による影響なんじゃ??とも思われたり。

個人的な印象ですが、調べれば調べるほど、このフランス人科学者は、単なる米国嫌いの右翼派?のような印象です。

 

その後、セラリーニ氏は論文取り下げを不服とし、別の学術誌に論文が復活したのが2014年です。
しかし、その間、追随するような研究発表もなく、むしろGMO作物に関しては、「さほど危険性はないかもよ」といった論調のほうが強くなり、復活した論文は完全にスルーされました。

 

かなり調べましたが、これ以外に遺伝子組み換え作物と悪性腫瘍(がん)との関連を指摘する論文は、ほとんど存在しません。「遺伝子組み換え=発がん性」は、今のところ心配不要かと思われます。

遺伝子組み換え飼料で育った家畜には胃炎が多い

現在、遺伝子組み換えで商業利用されているのが、大豆とトウモロコシです。
その90%以上が、家畜の飼料になっています。

遺伝子組み換え作物の影響を最も受けているのは、間違いなく家畜です。

 

遺伝子組み換え飼料を使うと、家畜が胃炎を起こす確率が高いことが、オーストラリアの生化学者と、米国人の獣医師らの共同研究でわかっています。

ブタ168匹のうち、半分に遺伝子組み換え大豆とトウモロコシ、残り半分には、非遺伝子組み換えの飼料を与えて、同一環境下で飼育、5カ月後に解体したところ、GMO飼育の豚は胃炎の発症率が32%、非遺伝子組み換え飼料の豚は12%だったとのこと。

A long-term toxicology study on pigs fed a combined genetically modified (GM) soy and GM maize diet

上2つが非遺伝子組み換え、下2つが遺伝子組み換え飼料で飼育した豚の胃袋。

死亡率は、それぞれ13%と14%で、大した差が出ていません。

思うに、これは「遺伝子組み換え作物のタンパク質は、消化が難しい」ということなんじゃないでしょうか?

 

 

タンパク質の合成「遺伝子の発現」

遺伝子組み換えの最も気にすべき問題点なのでしょうか?

「農業従事者へ対するモンサント社の搾取」という点を批判するのは、社会運動家や思想家の方々にお任せするとして、ここでは健康面についてのみ考えてみます。

 

タンパク質の設計図はDNAの中に、暗号化されて収まっています。

それを復号して、設計図通りにアミノ酸を組み立て直す作業、これがタンパク質の合成です。

なので、タンパク質の合成を「遺伝子の発現」とも言います。

 

遺伝子組み換え作物のタンパク質とは、設計図が変更されたタンパク質です。

設計図を変更されたタンパク質は、人間の胃腸が対応できないタンパク質が出現する可能性がある、これが遺伝子組み換えのリスクです。

グルテン不耐性について

遺伝子が変更されたタンパク質では、消化が難しくなる場合がある、その代表例が小麦のグルテンです。

1950年代、米国で小麦の品種改良が進み、農業生産性は飛躍的に伸びました。別名「緑の革命」といいます。

その後、セルリアック病でもないのに、なぜだかよく分からないけど小麦を抜くと病態が軽減するという「グルテン不耐性」が注目を浴びるようになります。

その後の研究で、小麦グルテンは、品種改良を重ねた上で出来上がった新しいタンパク質ゆえ、人間の消化機能が適応しておらず、胃腸粘膜を荒らし、リーキーガットを悪化させることが分かってきました。

 

1950年代に遺伝子組み換えの技術はありません。当時行われたのは、交配を重ねた「品種改良」です。

「遺伝子組み換え」ばかりが悪者扱いされる傾向にありますが、DNAに変化を与えるという点では、遺伝子組み換えも品種改良も同じです。

遺伝子を操作したタンパク質は、人間の消化器が対応できないタンパク質が発現することがあり、長期的に健康を害しかねない、これが遺伝子組み換え食品のリスクだと思われます。

 

 

遺伝子組み換えが世に出回るようになって30年が経つのですが、直接的な健康被害はまだ確認されていません。

なんとなくグレーな部分に対して恐怖感を持つのは仕方ないのですが、そこそこ安全性は認められてもよさげというのが、ここ10年くらいの論調です。

ではそれを踏まえた上で、日常生活レベルで、遺伝子組み換えに対してどう対応するのか?を明日書きます。

 

 

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