亜鉛不足が味覚障害を起こす理由
細胞は、遺伝子という設計図を元に合成されます。
これを遺伝子の「発現」といいます。
発現の前に、設計図がDNAからRNAにコピーされるのですが、そのコピーのスイッチを入れるのが亜鉛です。
よって、亜鉛は、細胞分裂の盛んなところで多大な需要が発生します。
細胞分裂の盛んなところ、それは、皮膚、粘膜、毛髪、爪、生殖器官(精巣、卵巣)です。
亜鉛不足の症状は、以下のように、皮膚、粘膜などに出やすくなります。
・抵抗力が弱い、アレルギーがある
・喉など粘膜が弱い、風邪をひきやすい
・腸粘膜が弱い、胃弱である
・髪の毛、爪がもろい
・元気がない、精力減退
皮膚は、代謝に1ヶ月ほど要しますが、粘膜はもっとサイクルが早くなります。
例えば、舌の味覚を感じる味奮細胞の代謝サイクルは約10日とかなり短い。
粘膜の中でも、舌は、亜鉛不足の影響がもっとも出やすい場所なんです。
外食続きだと、添加物によるパンチの効いた味付けや、塩分の濃い味に慣れてきますが、亜鉛不足による味覚障害が同時進行しているとも言えますね。
亜鉛には、他のミネラルと違って、貯蔵蛋白が存在しません。
例えば、鉄には鉄の貯金箱であるフェリチン、カルシウムにはカルシウムの貯金箱である骨があります。一時的に不足しても、貯金箱から補えるような仕組みがあるんですね。
ところが、亜鉛は貯金箱に相当するものがないので、不足するとダイレクトに症状に出ます。
他のミネラルと違って、日々必要量を補給しなければ、亜鉛不足の症状が出やすい、これも亜鉛の特徴です。
ALP(アルカリホスファターゼ)でみる亜鉛不足
健康診断で計測する「ALP」の数値で、亜鉛不足を推測することが可能です。
ALP(アルカリホスファターゼ)とは?
健康診断で必ず計測する数値に「ALP」があります。
ALPの正式名称は「アルカリホスファターゼ」
名前が示す通り、アルカリ環境下で働く ホスファターゼ(酵素)です。
ALPは細胞の代謝時に必要となる酵素の一つで、肝臓や骨の代謝が亢進しているときには、ALPの数値が上昇します。
健康診断では、ALPが高いと注意信号とみなされますが、
それは「肝臓や骨の細胞の破壊が進んでおり、修復活動が盛んなためALPが上昇している」と解釈するからです。
分子栄養学的には、このALPの数値を亜鉛不足の指標として参考にします。
ALPは亜鉛と仲良し
ALPの補酵素は、亜鉛とマグネシウムです。
亜鉛とマグネシウム不足では、ALPは活性化しません。
よって、ALPが150以下になると、亜鉛不足、マグネシウム不足の暗示とみなします。
理想的には180以上欲しいところです。
ただし、ALPは、他の要因で上昇するケースがとても多いので、単独の数値で亜鉛不足の判断は出来ません。
ALPは骨芽細胞に多く存在するため、骨折時や、骨粗鬆症の疑いありの場合は上昇します。
骨の細胞が代謝する時に大量に必要となるので、身長が伸びる成長期の子供は、300といった非常に高い数値を示すことが普通です。
脂肪肝など、肝臓に炎症がある場合、胆石がある場合も上昇します。
例えば、ALPが200前後で正常値に収まっていても、亜鉛不足による酵素の不活性と、脂肪肝や骨粗鬆症による上昇が混在しているケースが多い。
鉄のフェリチンと同じく、亜鉛のALPはマスキングされやすいので、数値読みにはテクニックが必要なんです。正常値だからと亜鉛が充足していることを示すわけではありません。
逆に、ALPが150程度と低い場合には、絶対的な亜鉛不足が疑われますので、食生活の見直しや、サプリメントによる補給、腸内環境の改善を意識した方が良いと思われます。
血清亜鉛について
亜鉛は、細胞内に多く存在しているミネラルですが、血液中の亜鉛(血清亜鉛)も、亜鉛不足の指標として有効です。95前後あると良い感じです。通常の健康診断では計測しないので不便ですが。
栄養療法では、血清亜鉛は銅とのバランスを診ることで、PMSやウツ症状の原因を推測するのに有効です。
気分の落ち込み、産後・更年期のウツには銅・亜鉛バランスをチェック | ビタミンアカデミー
腸内環境に左右される亜鉛の吸収
私の経験ですが、腸の4Rを意識する前は、サプリメントで亜鉛を補充しても、一向に血清亜鉛が上昇しませんでした。
ミネラルは無機物ですから、吸収率が非常に悪くなります。
腸内環境が悪化している場合は、亜鉛の吸収率はさらに落ちます。
カンジダ菌が横取りしているケースも多いです。
亜鉛サプリで血清亜鉛が上昇しない場合は、腸の4Rなどを意識した胃腸粘膜の改善をおすすめします。
私の場合、胃腸ケアをしたところ、血清亜鉛は97前後と割と良い数値になりましたが、ALPは150前後になることが多く、低空飛行のままです。
ALPは酵素ですから、原料はタンパク質です。
私のALP低値は、おそらくタンパク質やATP不足を反映しているものと思われるので、この点は亜鉛サプリではなく、消化酵素と食事でタンパク質不足の解消が先決ですね。
【消化酵素】タンパク質不足解消には膵臓の負担を減らすべき理由 | ビタミンアカデミー
亜鉛サプリの摂り方
私の経験上、亜鉛サプリは吸収する側の胃腸、腸内環境の影響の方が大きいです。正直言って、吸収する側の胃腸粘膜さえ状態がよければ、どの亜鉛サプリメントもあまり効果は変わらない気がします。
私が亜鉛を飲むのは、
・生理前に、PMS対策として
・お酒を飲む時、飲み会の前
・風邪のひきはじめ
特に、お酒を飲む時、飲み会の前には必ず亜鉛を飲んでおきます。
亜鉛は、アルコール脱水素酵素の酵素反応に関係しており、肝臓でアルコールを分解するときに、絶対的に需要が増すからです。
冬シーズンの宴会では、風邪菌に感染しやすい状況で、飲酒により亜鉛不足で粘膜が脆弱化しやすい。忘年会のシーズンに風邪ひくパターンはこれなので、予防的に必ず亜鉛入れます。
動物性タンパク質で亜鉛不足解消
亜鉛の豊富な食材は、牡蠣、豚レバー、チーズ、卵黄など、圧倒的に動物性のタンパク質源に多くなります。
玄米やゴマなども亜鉛が豊富ですが、亜鉛の吸収を阻害するフィチン酸も同時に含むため、吸収率でかなり不利です。
先述したように、亜鉛は体に貯金が出来ないミネラルです。
普段から意識して亜鉛の豊富な牡蠣やレバーを積極的に食べてくださいませ。