【糖質制限で体調悪化するタイプとは?】

糖質制限やってはいけない方の糖負荷検査データ

低血糖による症状にお悩みの方の、糖負荷検査のデータを拝見する機会がありました。

糖負荷検査はコストも手間もかかる検査ですので、文献や調査結果などでしか見たことがありませんでした。

実際に検査をされた方が、その他のデータもお持ちで、且つご本人が目の前にいるという、とても貴重な機会でした。

 

一見、普通のデータですが、カウンセラーが見れば「おっと、これは!」と目を引くデータです。

 

この方の場合、食後高血糖にはなっていません。

インスリンの初動は悪くない。

よって、食後の血糖値は140以下で、血糖値の急上昇は起きていない。

 

ところが、3時間を過ぎたころから、血糖値がズルズルと低下、空腹時血糖が56まで低下しています。

疲労感、眠気、震え、判断力低下など、低血糖の症状が強く出るレベルです。

分かりやすいようキャプション入れてみました▼

 

低血糖症の典型的なパターンは、食事直後のインスリンの立ち上がりが悪く、食後の高血糖の反動で引き起こされる低血糖です。

詳しくはこちらで書きましたのでご参考ください▼

【食後の眠気はなぜ起きる】食後高血糖・低血糖症の原因は腸にあり | ビタミンアカデミー
食後高血糖はなぜ起きるのか? 「食後に眠い」は、典型的な副腎疲労の特徴ですよ、とこちらで書きました▼ 今日は食後の眠気をもうちょっと掘り下げてみます。 食後の眠気には、血糖値が大きく関係しています。 食後の眠気とは無縁の、健康体の方は、血糖値とインスリンの分泌の曲線がとても綺麗です。 ところが、食後に眠気の出る人は、血糖値が安定しません。山が高く、谷が深い。 健康な人は、血糖値が一番高いところでも

今回のケースは、食後高血糖は無いが低血糖症になる、副腎疲労の方の典型的なデータかと思われます。

血糖値を保つことが出来ない理由

この方の場合、糖新生が出来てないため、血糖値を保つことが難しいのだと推測されます。

糖新生を行うのは肝臓です。

(糖新生って何??という方は、ここ★とかここ★をチェックしてください)

そこで、この方の肝機能のデータを確認してみます。

 

ご覧のように、すべて低いです。

この時、すでにご自身でビタミンBなどのサプリメントをお試しでした。

ビタミンBを供給してこのデータですから、もともとの肝機能活性が低下していると推測されます。

もちろん健康診断では異常になるデータではありません、むしろ健康体と花丸が付く結果です。

しかし、分子栄養学的な立場から判断すると、この方の体調不良とうまくリンクするデータになっています。

 

さらにお話を伺うと、ベジタリアン的な食生活を長らく続けていた方でした。

長期的なタンパク質不足から酵素活性も低下、肝機能も低下していることが分かります。

その他のデータもスタミナ切れを起こしやすく、エネルギーの確保が難しいタイプであることは容易に判断できました。

 

おそらく、長期的に副腎に負担がかかっていたはずです。

副腎疲労によるコルチゾールレベルの低下が背景にある。

糖新生を起こす工場も休業状態で、工場職員にはっぱをかける上司命令も出ていません。

 

現在「食後に睡魔が襲う」という典型的な低血糖症の症状にお悩みです。

もしこの方が「低血糖症には糖質制限だ!」と「糖質制限」に手を出すとどうなるでしょう?

さらなる体調悪化になることは、目に見えていますよね。

 

「糖質制限」で健康になれる人、なれない人

糖質制限して健康になれるのは、肝機能に問題がなく、副腎疲労のない方です。

高たんぱく食に耐えられる消化力をお持ちで、胆汁もしっかり出て、高脂質もドンと来いいう膵臓をお持ちの方が理想。

グリコーゲンを貯金できる筋肉もそこそこあるのが望ましいです。

 

もし糖新生がヘッポコなら、ケトン体も推して知るべし(ケトン体も肝臓で出来ます)

それに、赤血球のエネルギーはぶどう糖のみですから、末梢血流に問題のありそうな、指先の冷たい方は向かないと思われます。

空腹時にちゃんと指先が体温を保っているか、握手すれば分かりますね。

 

もうちょっと深く掘り下げますと、副腎疲労の初期であればストレス反応が旺盛ですから、糖質制限してすごく元気になったような体感があります。

アドレナリンでスパークしている状態なので、お話しただけでピンときます。

このような方も、長期的には体調悪化の可能性が高くなりますので、ほどほどに質のよい糖質の補給が必要です。

「質の良い糖質」とは、精米度の低いお米や雑穀、レジスタントスターチ豊富なでんぷん質です。

「なんだかよく分からない」と言う方は、定期的に開催している私の「糖質セミナー」へお越しください。

「糖質制限」という言葉の使い方

わたくしも「糖質制限したほうが良いですよ」的なことをよく言っています。

その理由は、ご相談に見えられるたいていの方が、’無知による糖質過多’だからです。

朝食にパン、昼は丼、夜はラーメン定食。

そのような食生活の方は、多糖類と単糖類の区別もつきません。

分かりやすく「糖質を制限する」と言ってあげたほうが、結果的に「ちょうどよい糖質量」に着地することが多くなります。

 

もう一つのメリットは、糖質を制限することで相対的にタンパク質の摂取量が増える点です。

特に女性の方は炭水化物メインのお食事の方が多くタンパク質摂取量が少ないため、質的な栄養失調から体調不良になる方が多い。

そういった方たちにも「糖質を制限してくださいね」とお伝えすることにしています。

 

食事における個々人の基準が全く違うので、お相手に応じて言葉を選び、伝え方を変えているわけです。

健康に意識が高い方の問題点

問題は、もともと健康に意識が高い方です。

そのような方は、私のところへいらっしゃる前に、すでに色々な健康法をお試し済みです。

一通りの食餌療法は試したが、その結果が芳しくないため、迷子になってご相談に見えられるパターンです。

 

ほとんどの原因は「個体差」を認識できていない点にあります。

流行の食事療法が、この世で最高の健康法だと「信者」になります。

教祖の手法をそのまま真似しますので、かなり厳格な食事療法となります。

メディアに乗って急激に広まる情報は、分かりやすく単純化されていますので、極端になりやすいのです。

そういった方々に「糖質制限してください」と言うとますます迷宮入りしますので、考え方をいったんリセットしてもらいます。

 

分子栄養学では「個体差」が一番重要です。

「個体差」を判断するためにデータを活用します。

この方のように、肝機能の活性が低下しており副腎疲労のある方は、良質の炭水化物(砂糖じゃないですよ)を入れながら血糖値を保ち、自律神経のバランスを取るのが大切です。

 

前述のとおり、糖質制限は確かに優れた面を持っていますが、合わない人もいます。

ご自身の身体の教祖はご自身です。

流行に流されないよう、つねに俯瞰するようにしてくださいね。

 

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