コレステロールは大事な栄養素である
以前は悪者扱いだったコレステロールですが、ここ数年ですっかり立ち位置が変わってきました。
最近の研究では、コレステロールはやや高めの人の方が死亡率も低く、病気にもなりにくいことが判明。
数年前に、基準値が見直されたことは、こちらで書きました▼
低いのはむしろ問題ありのコレステロール!食べるものは関係なかったという話 | ビタミンアカデミー
以前の基準値(LDLコレステロール濃度 140mg/dl)は、日本動脈硬化学会が「だいたいこれぐらいかなー」みたいな感じで決めたらしく、実は明確な根拠がなかったらしい。
けっこういい加減だなーという印象ですが、健康診断の基準値とはどれもそんな感じですね。
分子栄養学では、コレステロールは生体に大切な栄養素とみなします。
コレステロールの大事な5つの役割
では、コレステロールは生体においてどういう栄養素なのか、まとめてみます。
1, コレステロールは細胞膜の原料となる
細胞膜の原料は、タンパク質、リン脂質、コレステロールです。
細胞膜における、タンパク質と脂質(リン脂質、コレステロール)の比率は臓器によって様々です。
特にコレステロールが重要になるのは、脳と神経系の細胞になります。
体内コレステロールのうち1/3以上は、脳と神経系で占められるそうです。
これは、脳が様々な伝達物質のやりとりを、細胞膜を通して行っているため、
そして脳の情報を身体の隅々まで伝達する電線(神経細胞)は、コレステロールで包まれているためです。
うつ症、パーキンソン病、統合失調症など、脳神経に関する病態では、コレステロールの状態が重要になります。
2, コレステロールはホルモンの原料となる
ホルモンはコレステロールを原料に合成されます。
コレステロールが原料となるホルモンは、
副腎でつくられるコルチゾール(ストレスホルモン)
睾丸でつくられるアンドロゲン(男性ホルモン)
卵巣でつくられるエストロゲン(女性ホルモン)
胎盤でつくられるプロゲステロン(黄体ホルモン)
などなど。
コレステロールは、性欲減退、抗ストレス、抗炎症力などに関係してきます。
3, コレステロールは消化液、胆汁の原料となる
胆汁酸は、肝臓でコレステロールを原料に合成されます。
胆汁酸の仕事は、消化管で脂肪分を乳化することです。
乳化されなければ、腸から脂質は吸収されませんから、脂溶性の栄養素(ビタミンA、ビタミンEなど)が吸収されません。
同時に、膵臓からでる消化酵素リパーゼを活性化する働きもあります。
油もの、肉を食べると胃がもたれる、食べているのに栄養状態が悪い場合、胆汁酸が不足している場合があります。
4, コレステロールはビタミンDの原料となる
ビタミンDは、コレステロールを原料に体内で合成されるビタミンです。
ビタミンDは、ひと昔前まで、骨にカルシウムが吸収される際のお助けマン的役割しか認知されていませんでしたが、実は、免疫にも、抗炎症にも、筋肉にも、脳にも、多方面で重要だよね分かり重要度がすっかり変わりました。
コレステロールの不足は、ビタミンDの合成低下を意味します。
ビタミンDの低下は、あらゆる意味で健康上不利です。
5, コレステロールはCoQ10の原料となる
CoQ10は、ミトコンドリアがエネルギーを作るときに必須の補酵素で、抗酸化物質としても重要です。
最近は、ユビキノールという商品名でサプリメントとしてもよく知られるようになりました。
CoQ10の原料は「メバロン酸」で、コレステロールが肝臓で作られる過程でできる脂肪酸の一種です。
よって、低コレステロールは、CoQ10の原料のメバロン酸不足を暗示することになります。
ちなみに、コレステロールを低下させるお薬「スタチン」は、このメバロン酸の生成する酵素を阻害するので、結果的にCoQ10の生成も低下します。
コレステロール低下薬を飲むと、コレステロールが低下するより、CoQ10が低下する率のほうが高いそうです。(代謝経路を考えると当たり前なのですが)
CoQ10はミトコンドリアが多いところに必要です。ミトコンドリアが多い臓器は心臓です。
コレステロールを低下させるお薬の目的は、心筋梗塞の予防なのですが、CoQ10が先に低下して、心臓の機能を低下させては、本末転倒ですね。
まとめると、栄養素としてのコレステロールの役割は以下となります。
コレステロールの重要性が分かりましたでしょうか?
・細胞膜の原料
・ホルモンの原料
・胆汁の原料
・ビタミンDの原料
・CoQ10の原料
コレステロールの値をどう判断するか?
コレステロールの適正値をずばり数値で示すことは難しいのですが、200以上は欲しいところです。LDLが140、HDLが70以上だとかなり優秀です。
血中にコレステロールが高すぎるのは、コレステロールがうまく使えておらず代謝がうまく行われていない状態を暗示します。
逆にコレステロールが低すぎるのは、コレステロールを作る肝臓の機能が弱く、栄養自体が足りない状態です。
高くても、低くても、症状との関連を疑うのが分子栄養学的な判断です。
コレステロールに関しては、ここ数年でパラダイムシフトが起きました。
古い基準で判断をされるお医者さまにかかると、必要がないのに、コレステロールを低下するお薬が処方されるケースがあります。
本当に必要なお薬かどうかは、セカンドオピニオン、もしくは栄養療法医などに相談の上決めてください。
コレステロールについては、こちらでも少し書いてますのでよかったらご参考ください▼
『卵1日3個でコレステロールが改善』毎朝1個食べるだけで抗炎症の効果あり | ビタミンアカデミー