成長期の栄養状態がその後の体質を決める
分子栄養学の基本ですが、細胞における栄養の要求量は人生を通じて一定ではありません。
病中病後や、妊娠期、ストレスの多いライフスタイルの人は、栄養の需要が大きくなります。
例えば、ビロリ菌のある人とない人では、胃でのビタミンCの需要が5〜6倍の違いがあります。
人によっては1,000mgで十分でも、ピロリ菌がいれば5,000〜6,000mg必要になるということです。
人生のステージで、もっとも栄養の需要が大きくなる時期、それが「成長期」です。
小学校高学年から高校生にかけて、身長が急激に大きくなります。
この時期、体内では何が起こっているのでしょうか?
例えば、骨芽細胞の代謝に必要な酵素ALP(アルカリフォスファターゼ)は、大人では200程度ですが、成長期の子供は1,000程度まで跳ね上がることが多いです。
もし成人でALPが1,000以上になれば異常値で再検査の通知が来ますが、子供だと普通なんです。
なぜなら、身長がものすごいスピードで伸びる成長期には、骨芽細胞の分裂が激しく行われているので、多くの酵素(ALP)が必要とされているからです。
ALPの補酵素の代表は「亜鉛」です。
ALPの数値で亜鉛不足が推測可能な点は、こちらで書きました▼
【亜鉛不足で味覚障害になる理由】ALP(アルカリホスファターゼ)と亜鉛の関係 | ビタミンアカデミー
成長期にALPが大量消費されるということは、同時に、多くの亜鉛が必要されていることを意味します。
亜鉛は、骨の成長にとても重要なミネラルです。
例えば、ラットに亜鉛欠乏の餌を長期間に渡って与えると、骨量は著明に低下することが分かっています。
Skeletal effects of zinc deficiency in growing rats
同時に、亜鉛は粘膜細胞で欠かせません。
亜鉛不足では腸粘膜の上皮細胞が代謝異常を起こします▼
【リーキーガット症候群】亜鉛不足だと腸管上皮細胞の代謝不全が起こる | ビタミンアカデミー
成長期には、骨芽細胞の代謝に亜鉛が取られるため、胃腸粘膜に回る分が不足しがちです。
不足の状態が続けば、胃腸が弱くなります。
胃腸の弱さは、栄養吸収の弱さを暗示しますので、虚弱体質の大人が出来上がります。
12〜15歳くらいの時期の子供が身長の伸びが著しい時に「身長に栄養が取られた」という言い方をしますが、分子栄養学的にはわりと的を得た表現だと思います。
食べても太れない、筋肉のつかない体質の人は、総じてこのタイプが多いなと感じます。
なぜかというと、私自身がそうだったから、よくわかるのです笑
先日、私と同じく痩せ体質の友達が、幼少期の写真を見せてくれたのですが、丸々とした子供で驚きました。身長が急激に伸びる時期に、胃腸粘膜に栄養が追いついてないんですね。虚証タイプはこのパターンが多い気がします。
胃腸粘膜が脆弱で栄養の吸収が悪いと、肥満の心配は不要ですが、栄養療法の効果が出にくいので、体質改善に時間がかかります。
太らなくて良いわね、と良く言われますが、中年期以降で痩身すぎるのはあまり良いことではありません。
太れない、痩せすぎの問題点はこちらに書きましたのでご参考ください▼
【痩せ過ぎ解消・太るための方法】食べても太らないは問題あり!? | ビタミンアカデミー
成長期に必要な栄養素は、亜鉛だけではないのですが、分かりやすいので書いてみました。
子供は、ファーストフードやジャンクフードが好きなのは仕方ありませんが、成長期の栄養の欠損はその後の人生を左右します。
成長期のお子さんは、肉も魚も野菜もしっかり食べるを目指してくださいね。