ミネラルの吸収に「胃酸」が重要な理由
ミネラルとビタミンの違い
ミネラルとビタミンの違いは何でしょうか?
ビタミンは有機物です。
ミネラルは無機物です。
無機物のミネラルと比較すれば、有機物のビタミンは吸収率が良いため、不足状態に対し「量」を補うことで解決されます。
壊血病にはビタミンCを、脚気にはビタミンBを、「量」で補うことで治ります。
ところが、不足状態に対し量を補う治療ができないのがミネラルです。
ミネラルは、細胞分子に届けることが「量」で解決せず、吸収率を考えないと意味がない、これがミネラルとビタミンの違いです。
不足しやすいミネラルとは?
必須ミネラルには、不足しやすいミネラルと、さほど不足の心配をしないでも良いミネラルがあります。
その違いは何でしょうか?
ミネラルはそのままでは単なる金属元素ですから、イオン化された状態でなければ吸収されません。
食品に含まれるミネラルは、まず胃で胃酸によって溶け出されイオン化されます。
イオン化されることで初めて、小腸の上皮細胞から吸収可能になります。
必須ミネラルの中でも、ナトリウム、カリウム、塩素などは、一価のイオン(Na+、K+、Cl-)で吸収されます。
マグネシウム、カルシウム、亜鉛などは二価のイオン(Mg2+、Ca2+、Zn2+)です。
一価イオンのナトリウム、カリウム(Na+、K+)は、安定性があり、そのままイオン状態を保ちやすく、小腸上皮細胞から吸収されます。
ところが、マグネシウム、カルシウムなど、二価のイオン(Mg2+、Ca2+)は不安定な状態で、小腸へ移動する前に、アルカリ性の膵液で中和され、パルミチン酸やステアリン酸のような脂肪酸に結合してしまいまい、腸からの吸収が困難になるのです。
同じ必須ミネラルでも、ナトリウムやカリウムと比べて、マグネシウム、カルシウムなどが不足しがちだと言われるのは、吸収する際の仕組みにも理由あるからなのです。
ミネラルが吸収されるには胃酸が重要
当然、胃酸が出ていなければ、ミネラルはイオン化されませんから、ミネラルの吸収において胃酸が重要であることがわかりますね。
私は、塩酸ベタインで胃酸を補充することで、ミネラルの吸収をサポートしていますが、日本人にはあまり馴染みがありません。そんな人には梅干しをおすすめしてます。
胃酸補助・消化促進に「梅干し」が分子栄養医学的に最強食品である件 | ビタミンアカデミー
ミネラルの吸収に「腸内細菌」が重要な理由
小腸で吸収されなかった、脂肪酸と結合状態のマグネシウムは、大腸の腸内細菌が出した有機酸により再びイオン化されて、腸粘膜から再吸収されます。
つまり、吸収率の悪い二価イオンのマグネシウムが吸収されるためには、腸内環境が乳酸菌など良い細菌で満たされ、酸性に保たれていることが条件なのです。
もし、食物繊維や発酵食品の不足で、腸内細菌が悪玉菌が優勢な状態だと、腸内がアルカリ性に傾くので、ミネラル再吸収の確率は低くなります。
ミネラルの吸収率をあげる2つの条件・まとめ
マグネシウムやカルシウムなど、不足しがちなマグネシウムやカルシウムなど二価イオンのミネラルが吸収される身体側の条件は以下2つです。
・腸内環境が良好で善玉菌が優勢であること
現代人はストレス社会で、胃腸に不具合を抱える人が多いです。
胃が痛ければ、H2ブロッカーのような胃酸を抑制するタイプの胃薬が処方されます。
風邪をひけば抗生物質が処方され、腸内環境のバランスが崩れます。
胃酸も腸内細菌も、ミネラルの吸収に非常に重要なキーになるのですが、気がつかないうちにミネラル吸収の環境が悪化していることに多くの人が気づいていません。
吸収側の胃腸の状態が悪いままでミネラルのサプリメントを飲んでも無駄になります。
ミネラルは量を効かせることを考える前に、吸収される環境を整えること。
それは胃酸の分泌を邪魔しないこと、腸内環境を整えること、この二つが重要であることを覚えておきましょう。