鉄を乗せたトラック「トランスフェリン」
鉄をサプリメントで入れるかどうかは、いろいろな指標を使って判断します。
その一つにTIBCとUIBCがあります。
TIBCは「総鉄結合能」(Total iron binding capacityの略)
UIBCは「不飽和鉄結合能」(Unsaturated iron binding capacityの略)
これだけだと何のことやら??ですよね。
健康診断の値を見てみてください。
「血清鉄」という項目があると思います。
これは血液中の鉄を意味します。
まさか、むき出しの鉄が血液中に流れているわけではありませんよ。
鉄はトランスフェリンというタンパク質に乗って運ばれています。
このトランスフェリンというタンパク質のトラックに乗った鉄の量が「血清鉄」です。
鉄を乗せていない、空っぽのトラック「トランスフェリン」がUIBC(不飽和鉄結合能)
鉄を乗せているトラックも空っぽのトラックも、全部を合わせたものがTIBC(総鉄結合能)です。
つまり TIBC(総鉄結合能)= 血清鉄 + UIBC(不飽和鉄結合能)
TIBC、UIBC、血清鉄の3つを見て判断する
貧血と一口に言っても、その状態はひとそれぞれです。
例えばガチで鉄が少ない人、これは鉄自体の量が少ないので、
血清鉄が少なめなのにUIBC・TIBCは多くなります。
鉄が少ないからせめて運搬トラックだけでもたくさん作らなきゃと身体が頑張っている状態です。
だいたいTIBCを300、UIBCを200、血清鉄を100ぐらいの目安にして判断していますが、
こんな感じで鉄欠乏があると血清鉄が少な目で、UIBCが多め、空っぽのトラックばっかり増やそうとしています。
これは「あーこりゃ鉄が足りてないなー」という分かりやすいパターンです。
赤血球が何らかの原因で壊れるのが早くなる「溶血」という状態だと、壊れた赤血球から鉄がこぼれます。
トラックがこぼれた鉄をせっせと回収するため、血清鉄が増えてUIBCが減ります。
溶血があればこんな感じ。血清鉄が増えてUIBCが減ってますね。
溶血についてはこちらをご参考にしてください↓
ランニングする人が注意したい溶血 | ビタミンアカデミー
面白いことに、血清鉄は少なくて貧血なのにトラック(UIBC)の増えない人がいます。
貧血なのにUIBCが増えない、結局トータルのトラックの数(TIBC)も少ないというパターンです。
これは身体のどこかに炎症があるため、身体が鉄を保持しないように工夫しているという動きです。
こちら★で書きましたように、炎症があれば鉄は生命体にとって脅威です。
この場合、鉄をサプリメントで摂るようなことをしたら火に油です。
このように炎症があればUIBCが減ります。この方は肝臓に炎症があってアトピーもあります。
身体のどこかに炎症があってUIBCが減る方、もしくは低たんぱくでUIBCが少ないという人
私が見る症例では経験上これが一番多いです。
現代人はほんと炎症多いですよ。ご自身が気がついていなくても。
この場合の「炎症」とは自覚症状がない慢性炎症です。データを見て初めて分かります。
炎症の無い方ほど健康で長生きって調査結果も出てますから、炎症の有無をチェックするのはアンチエイジングを考えるのに最適だと思います。
こうやってUIBCとTIBCのバランスを見ただけでも炎症があるかどうかのヒントになりますから、一度は詳細な血液検査を受けてみられることをお勧めします。
血清鉄、UIBCのデータを読むときの注意点ですが、亜鉛と同じように★日内変動があります。
血清鉄は朝方が高くて夜にかけて低くなり、UIBCはその逆で朝に低くて夜にかけて高くなる。
なのでアレ?と思ったら採血した時間も確認します。
素人さんには難しい話だったかもしれません、
要は鉄はとても重要だけど、サプリで入れるかどうかを判断するのはけっこうきわどいミネラルだと思ってください。
炎症や感染があったりすれば味方どころか敵にもなりかねないですし。
なにを隠そう私自身が鉄サプリで失敗しました、
鉄の過剰摂取で腸管のダメージがひどく、顎あたりの吹き出物がえらいことになりました。