医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」
私の尊敬する宮澤先生の本が出ました。
医者が教える「あなたのサプリが効かない理由」
臨床分子栄養医学研究会、実践講座の副タイトルがそのまま本のタイトルになっているように、
実践講座で学ぶエッセンスがギュッと凝縮された内容になっています。
ちょっと中身をご紹介します。
平たい爪は鉄欠乏のサイン
あまりに初歩的な内容なので、取り上げるのがためらわれるくらいなのですが、
分子栄養学が初めての方もいらっしゃると思うので、まずは入門編からご紹介。
お肌の張りや髪、爪などは栄養状態を非常によく表しています。
人間の身体とはよく出来たもので、生命体としての存続に重要な部分、例えば脳とか副腎とか
活動が止まったら命に係わるものには優先的に栄養が割り振られていきます。
専門的にはこれを「栄養素の偏在」と言います。
栄養素は身体の各臓器に均一に割り振られるわけではないのです。
心臓や脳の働きが止まったら困りますよね、
ところが、肌や爪、髪の毛や関節などは少し不具合が起きても命の存続には別段影響がないわけです。
よって、こういった部分に栄養素の不足が最初に現れやすい。
視診(見た目の判断)である程度栄養状態は判断できるわけです。
爪が平たいのは典型的なミネラル代謝障害で、特に鉄欠乏が疑われます。
女性の場合は生理があるので、潜在的に鉄欠乏が非常に多い。
しかも健康診断ではHgbが11を切らないと「貧血」とは言われないので、
自分が鉄欠乏であることに気付いている人のほうが少ない。
爪を診てペローンと薄くて平らな場合、ああ鉄欠乏があるなあと分かりますが、
そういった方は「鉄欠乏の性格」である場合がほとんどで、これまたよく一致するのです。
分子栄養学を勉強すると、人間ウォッチングが楽しくなるというマニアックな 変態的 副作用があるのでご注意です。
以前、爪で分かる栄養状態に関してはこちらで書きましたのでよかったらご参照ください(↓)
爪が語る栄養状態 | ビタミンアカデミー
慢性疲労の人はプロテインを控える
慢性疲労の方は恒常的なタンパク質不足に陥っていることがほとんどです。
栄養療法では、そのタンパク質不足をいかに解消するかにかかっているのですが、
「じゃあタンパク質をたくさん摂ろう」で解決するかとうと、なかなかそうはうまくいきません。
プロテインでタンパク質をメガ盛りして治療効果が上がるのは、全体の半分くらいでしょうか。
実はタンパク質の消化・吸収・代謝にも多大なエネルギーが必要になるので、
慢性疲労でミトコンドリア機能の落ちた方には高タンパクが仇となることがあります。
「とにかく肉を食べてプロテインを飲みなさい」と、頑張ってタンパク質を取るのですが、
治療効果が出るどころか、身体に負担がかかって逆に体調が低下する。
これは私自身の経験です。
私は早い段階で宮澤先生に出会えて本当にラッキーだったと思います
本当の原因は「なぜタンパク質が不足しているのか」という点にあって、
タンパク質をたくさん摂れば解決するという問題ではなかったのです。
タンパク質は確かに大事ですが、「量」の問題で解決できる人とそうでない人といます。
その個人差を見極めなければならない、このお考えには深く共感しています。
栄養療法のゴールは「サプリメントが要らない身体になること」
宮澤先生の考え方で、私が一番素晴らしいと思うのはここです。
栄養療法ではほとんどのケースでサプリメントを使います。それもかなりの量で。
サプリメントを取って体調がよくなる。これは素晴らしい。
でも問題はそこじゃない。
なぜサプリが効いたのか?という点に本当のあなたの根本原因があるのです。
サプリが効いたということは、その栄養素の枯渇、もしくは多大なる需要が発生していたということです。
根本原因をみようとせずに「サプリが効いた」という事実だけで終わるのは、果たして正しい栄養療法といえるのでしょうか?
サプリメントはあくまで効率化の道具であり、最終的な目標は「サプリメントが要らない」身体になることです。
このようなお考えをもっていらっしゃるドクターは、当時は(私の知る限り)宮澤先生だけでした。
患者が頼るすべなくサプリメント漬けにあっているケースは非常に多いです。
私もその一人でした。
本当の根本原因にアプローチする、この考え方を学べたことは私の人生に大変なプラスとなりました。
自身のミッションに忠実であること
今回はちょうど本の発売直後が分子栄養学実践講座の最終講義日でした。
最終日にはパーティがあるので、実質これが出版記念パーティ(のようなもの)になりました。
もちろん私も本にサインしてもらいました。
今後も改めて出版記念パーティはしない予定とのこと。
こういった肩のチカラの抜け具合も宮澤先生の良いところなんですよねえ。。
ファンとしては「もうちょっと売りましょうよ~」と言いたくなるところですが。
一番大事なのは「自分のミッションに忠実であること」と先生はおっしゃいます。
出版して有名になるとか、メディアに出てちやほやされるとか、
それは自分のミッションではないので「やらない」(きっぱり)
ほんとにこんなお人柄なのです。
この本、分子栄養医学を学ぶ方は必読です。
これから栄養療法を取り入れようと思われているドクターもぜひ。というか絶対必読。
そうでない一般の方にはとっつきにくいかもしれません。
その場合は、ぜひあとがきと前書きだけでも読んでほしいです。
一般の外来と栄養療法のドクターとの考えの違いとはこういうものかって分かります。
お近くの本屋さんでぜひ手に取ってみてください。