アンモニアによる脳の疲労感
脳の疲労感、思考がぼんやりしてまとまらない、霧がかかったような「ブレインフォグ」と言われる状態についてです。
脳の疲労感にはアンモニアが関係しています。
アンモニアには毒性があります。
精神的な疲労、悩み、ストレスで脳を酷使すると、脳内のアンモニア濃度が高くなります。
脳内でアンモニアが増えると、もやもや感、思考の混乱、物忘れ、うつ病などの原因になります。
アンモニアによる脳への影響は「頭に霧がかかったようだ」と表現されることが多いようです。
アンモニアはタンパク質が代謝される時に作られます。
通常は肝臓で代謝されて、おしっこになって排泄されるのですが(尿素回路)、肝機能が低下すると、この尿素回路が滞ってアンモニア濃度が上がります。
身体でアンモニアが増えると、エネルギー源であるATPの産生を妨げてしまうので、疲労感が増加します。
血中濃度が高くなったアンモニアは脳関門から脳へ移動しますので、結局、脳がアンモニアの影響を受けます。
アンモニアですから体臭もきつくなります。
以前勤めていた会社で、毎晩深夜まで残業していた人が常にツンとした刺激臭を漂わせていましたが、まさしくアンモニア臭。いわゆる「疲労臭」ってやつですね。
溜まりすぎたアンモニアを、処理するのに有効なのがBCAAです。
スポーツ時に飲むアミノ酸サプリメントですが、アンモニア代謝に効果的。
私にとっては「困った時のBCAA」、疲労回復、二日酔いによく効きます。
BCAAは、セロトニンの原料となるトリプトファンと脳関門で競合するので、二次的にセロトニンを抑制して、覚醒作用があります。だから寝る前に飲むことはしません。
BCAAは、筋破壊を予防するのと同時にアンモニア処理を促進して脳と身体の疲労感を取り除くので、すっきり感が強いのですね。納得です。
BCAA以外で、アンモニアを代謝するのに効果的なアミノ酸は「アルギニン」です。
「アルギニン」は、肝臓の尿素サイクルを活性化させます。
味の素のアミノバイタルには、BCAAにプラスしてアルギニンもがっつり入っているので、アンモニア解毒に向いてると思います。
あとは肝機能向上させる機能性アミノ酸「オルニチン」も尿素回路に必要な栄養素です。
BCAAにしろ、アルギニンにしろ、オルニチンにしろ、肉、魚など動物性のタンパク質に含まれるアミノ酸なので、普段の食事でしっかりタンパク質を補給しておくことが大事です。
しかしながら、肝機能が落ちきってしまった人は、高タンパク食が負担になり、かえってアンモニアが発生するので注意が必要。肝硬変一歩手前の状態なので、該当する人は少ないでしょうけど。
アンモニアとCBS(シスタチオニンβ合成酵素)
アンモニア代謝を考えるとき、避けて通れないのが、CBS(シスタチオニンβ合成酵素)と言われる酵素です。
これはメチレーションのホモシステイン代謝を分岐するところで重要になります。
メチレーション図。一般の方は目にすることのない代謝図ですが、分子栄養学には必須。
我々の身体では、この代謝が日々粛々と行われているのです。
このCBS酵素が何らかの影響で活性化していると、ホモシステインはメチオニンへ変換されず、アンモニアと硫黄への代謝が優先されてしまいます。
例えば、CBS遺伝子に変異がある場合です。
無条件にCBSが活性化してアンモニア濃度が高くなりやすい。
同時に硫黄も濃度が上がりやすくなります。
硫黄は解毒に必要な栄養素ですが、多過ぎればまた毒。硫黄を含むにんにく、玉ねぎなどにアレルギーがある場合、CBSが亢進しているケースが多いとのこと。
CBS酵素のせいでアンモニカ過剰になりやすいということは、メチレーションでBH4が作られにくく枯渇しやすい。
BH4はセロトニン、ドーパミンが作られる時の補酵素なので、不安感、落ち着きのなさなど脳内伝達物質のアンバランスも同時に起こることになります。
CBSの遺伝子変異がある人(酵素CBSが活性化しやすい人)は、高タンパク食は負担になります。
高タンパク食でアンモニアが発生しやすいので当然です。
また、ビタミンB6はCBSを活性化させます。サプリメントでビタミンB6を補充するのは、アンモニア濃度を高くしてしまうので逆効果。
この場合、活性炭やハーブを使って溜まりすぎたアンモニアを定期的にデトックスすることが効果的。これは栄養療法では世界的に有名なエイミーヤスコ医師の治療プロトコルです。
アンモニアを解毒するのに使われるのがユッカというハーブ。
Now Foods, ユッカ(糸蘭), 500 mg, 100カプセル
砂漠に生えるリュウゼツラン科の植物で、このユッカの葉エキスはアンモニアや硫化水素、インドールを吸着する効果があり、ウンチやオシッコのニオイを少なくするハーブです。
ビフィズス菌を増やす働きもあるので、ダブルでウンチのニオイが消えるとのことで、ペット用サプリメントでの販売もよく見かけます。
発達障害、ADHD、てんかん、自閉症、こういった症状がある人は、高確率でCBSの遺伝子変異がある場合が多いとのこと。
その場合、糖質制限で過剰なタンパク質を取るのは、かえって症状を悪化させますし、良かれと思って摂ったビタミンB剤が逆効果になったりしますので、注意が必要です。
ADHD、自閉症、発達障害など、日本では治らないとされていますが、栄養療法では一定の効果を上げています。
多動、落ち着きがない、コミュニケーションに問題がある、これらは’症状’であり、症状の原因を栄養でケアすることで症状が改善します。この事実がもっと広く知られるようになってほしいと思います。
メチレーションにおける硫黄代謝、アンモニア代謝、システイン代謝はまた別途記事にまとめたいと思います。