ミネソタの飢餓実験
『栄養不足で痩せると、かえって過食欲求が強くなり、リバウンドして体脂肪が増加する』
ダイエット経験者なら、誰もが経験してそうなこの事実を証明した歴史的な人体実験をご存知でしょうか?
1944年、戦時中の飢餓対策の研究として1年をかけて行われたプロジェクト、通称「ミネソタ飢餓実験」です。
Minnesota Starvation Experiment
兵役を免除されることを条件に被験者を一般公募、100名以上が立候補して、うち32人の健康な男性が被験者となりました。
実験の内容は、
① 実験の最初の3ヶ月は、準備期間として1日 3500 kcalの体重維持食を摂って普通の生活をする。
② 次の6ヶ月は飢餓期間として、摂取カロリーを1日 1,570kcalに抑える。運動量は週に35kmのウォーキングを行う。
③ リハビリ期には4,000kcalの食事を摂る。
というものです。
半年の飢餓期間終了後の体の変化です。
・BMI値 22.7 → 17.2 (-5.5)
実験に参加した男性の写真。みなさんガリガリですね(Ref.The Great Starvation Experiment, 1944-1945)
摂取カロリーを1日 1,570kcalというのは、さほど極端に少ない量ではありません。
しかし問題はその食事内容にあります。
食事のほとんどは、ジャガイモ、キャベツ、マカロニ、全粒粉のパンでした。
その一方で、チューインガム、水、ブラックコーヒーは無制限に許可されました。
被験者には以下のような生理的な変化が見られました。
・むくみ
・冷え
・疲れやすくなった
・立ちくらみ
・手足のけいれん
・心拍数の低下
・腸の動きの低下
・血液量の減少
これだけ身体機能はおちたのにかかわらず、視覚と聴覚は落ちなかったそうです。
逆に視覚と聴覚は鋭敏になることがあったとのこと。
これは、飢餓というストレスに対する副腎ホルモン(コルチゾール、アドレナリン)の効果と思われます。
そして興味深いのは、精神状態の変化です。
・理解力、集中力の低下
・疲労感の増加
・無感動、無力感の増加
・性欲の低下
・ガム、コーヒーへの枯渇感、中毒症状
・気分障害、気まぐれ、イライラ感の増加
実験が終了してリハビリ期に入ってからの状態は、全員が異常な食欲だったそうです。
常に食べ物のことを考えてしまい、食に対する執着が非常に強くなったとのこと。
ほとんどの人が用意された4,000kcalの食事では満足できず、5,000kcal ~ 10,000kcalの量が必要だったらしく、ほとんどの人で実験前よりも体脂肪率が上昇したとのこと。
まとめると、
・飢餓状態で落ちた体重が元に戻る場合には体脂肪が増加する
まるでダイエットの失敗パターンそのまんまですね。。
質的な栄養失調がもたらすもの
ミネソタの飢餓実験が教えてくれるのは、栄養失調では人間がどのような状態になるかという実例だと思います。
1日に1,500kcalというのは、めちゃくちゃ少ない食事量ではありません。
例えば、朝ごはんはコーヒーとバナナ、昼はコンビニのサンドイッチ、夜はうどんとお稲荷さん
これくらいでトータル1,500kcalになります。
タンパク質が少なく炭水化物に偏った食事は、現代版栄養失調の食事内容と似ています。
その結果おこるのは、
冷え、むくみなどの身体的な変化。
ストレスの影響で鋭敏になる聴覚、視覚。
無気力、無感動、疲労感。うつ病のような精神状態。
摂取カロリーではない、質的な栄養失調の結果これらの症状がおこることになります。
そして、ダイエットと称して質の悪い食事をした場合、たとえ一時的に体重は落ちても、その後は異様な過食欲求が起こり、体脂肪の増加につながることも証明しています。
痩せる目的のダイエットの場合、栄養の質は絶対に落とすべきではありませんね。くれぐれもご注意ください。