「好きなことをして生きる」と健康になる科学的理由
Nスペの「あなたもなれる“健康長寿”100歳の世界」に出てきた、CTRA遺伝子の話が興味深く、調べてみたら超面白かったのでまとめ。
ノースキャロライナ大学とUCLAの共同研究による、人生の生きがいと健康に関する、たいへん興味深い発表です(2013年)
A functional genomic perspective on human well-being
被験者80人を使って、人生のどのようなことに幸せを感じるのか?という質問と、うつ傾向、血液を検査しました。
人間の幸福には、2つのタイプに分かれるそうです。
1. 向上心を持ち、社会に貢献することに生きがいを感じている人
これを「eudaimonic well being」と言います
別名「生きがい追求型の幸福」
2. 自分の欲求を満足させるときに感じる人
これを「hedonic well being」
日本語で「快楽追求型の幸福」
どちらのタイプも、ウツ傾向は低く、幸せ度が同じように高い。
ところが!
炎症と免疫に関する遺伝子「CTRA遺伝子」の発現には、対照的な相違があったそうです。
前者の「生きがい追求型の幸福」の人は、CTRA遺伝子の、免疫に関する遺伝子を多く発現させた。
つまり、免疫が向上、炎症レベルが低下するということ。
後者の「快楽追求型の幸福」の人は、CTRA遺伝子の、炎症に関する遺伝子を多く発現させた。
つまり、免疫よりも炎症レベルが高くなり、これは人間がストレスを受けたときの反応ということです。
遺伝子は幸福の内容を見分けている
長寿・健康の違いは、慢性炎症の有無であるということは以前書きました。
アンチエイジングは抗炎症力!健康なお年寄りになりたければ炎症を抑えるべし | ビタミンアカデミー
炎症は、本来正常な免疫反応なのですが、慢性炎症となると話は別で、栄養の吸収を阻害し老化を促進させます。
正常な免疫活性なのか、慢性炎症なのか、遺伝子は、人間の感じる幸福の「内容」を見分けており、
他者への貢献や、自己実現、向上心といった幸福を感じるときに健康で長生きになるよう発現を変えているということが、証明されちゃったわけです。
「遺伝子」とは、単なる設計図です。
設計図通りに組み立てるかどうかは、また別の話です。
この設計図通りに組み立てることを、遺伝子の「発現」と言います。
ある特定の遺伝情報をもっていたとしても、それを実際に組み立てるかどうかは、食事、栄養、環境など様々な要因で決まります。
遺伝子を発現させるかどうかをコントロールすること、これを分子栄養学では「エピジェネティクスに治療する」と言います。
「生きがい追求型」か「快楽追求型」か
論文中では、生きがい追求型の幸福を「eudaimonic well-being」と表現しています。
eudaimonicとは、哲学用語「eudaemonia」(エウダイモニア)からの派生語です。
eudaemonia(エウダイモニア)とは、アリストテレスの唱えた「理性がもたらす幸福、人間として徳を追求する最高の幸福」を意味します。
一方、快楽追求型幸福の「hedonic well-being」ですが、「hedonic」とは「快楽の」という意味です。
語源はギリシャ語の「pleasure」を意味する「hedone」、本来は「sweet」の意味です。
どちらも幸せであることには違いないのですが、遺伝子レベルで健康で長生きするのは「エウダイモニア」。
生き方の違いでエピジェネティクス的な違いが生じるのですね。
健康になる「幸福」のあり方
好きなものを買って消費(浪費?)をし、甘いものを食べ、飲酒も好きなだけ、
それは一時のストレス回避という観点では、’健康に良いこと’ですが、遺伝子レベルでは炎症促進、免疫低下を意味します。
本当の意味で、健康に寄与する幸せ感とは「自己実現、向上心、社会に貢献する喜び」です。
「自分軸」より「他人軸」を優先してきたため、生き辛くなっている人が、ある日突然、自己の解放に目覚め、
「好きなことだけして生きるぞー!」となって消費と浪費に目覚めるのは、真の幸福とは言えず、
遺伝子レベルで言えば、早く淘汰されるシステムになっています。
自分のやりたいことをやって、社会に貢献しながら生きる
そういう人を健康で長生きさせるよう、神様は人間をプログラミング済みということですね。
面白い!
とはいえ、学校の成績や親の評価、ずっと他人軸で生きることを強いられてきた人が、
突然、自分のやりたいことで社会貢献してくださいって言われても戸惑いますよね。
そんな方にはこれおすすめ。
島田紳助氏による伝説のNSC特別授業は、子供大人を問わず必見です。
もっと若いときにこれを見てたら人生変わっていたかも。