うつ病の原因「キヌレニン仮説」
幸せホルモンの「セロトニン」、安眠ホルモンの「メラトニン」がうまく作れない原因に、キヌレニン仮説があります。
キヌレニン経路とは、タンパク質のトリプトファンを、ナイアシン(ビタミンB3)の活性型であるNAD(Nicotinamide adenine dinucleotide)へ変換する経路です。
セロトニン、メラトニンも、トリプトファンを原料に作られます。
原料は同じトリプトファンですが、炎症があれば、セロトニンが作られる経路より、キヌレニン経路が優先されます。
結果、セロトニン、メラトニンは低下します。
キヌレニン経路それ自体は、必要な経路ですが、ナイアシンまでの変換に必要となる、マグネシウムやビタミンB6などの補酵素が不足していれば、キヌレニン酸、キノリン酸が過剰になり、アンバランス状態となります。
キヌレニン酸、キノリン酸は「神経毒」なので、興奮、ウツなどの症状が出ます。
(統合失調症など精神疾患患者の脳脊髄液で、キヌレニン酸が増加していることが確認されていますが、神経毒であるというのは、現在のところまだ「仮説」です、だから『キヌレニン仮説』と言います)
安眠ホルモン「メラトニン」の原料が、タンパク質の「トリプトファン」であることは、よく知られるようになりました。
眠れない人は、メラトニンを増やすべく、トリプトファンが多い豆腐や牛乳を摂るように、と言われておりますが、炎症があれば逆効果ということですね。
寝る前のホットミルクは、ホッと出来ない飲み物となります。笑
セロトニンの前駆体「5HTP」
セロトニンが少ないのなら、セロトニンをサプリメントで飲めばいいじゃんとなりそうですが、ホルモンは絶妙なバランスで成り立っています。
直接ホルモンを投与すると、過剰になったり、自己製造能力を失ったりと、それはそれで弊害が多くなります。
ですので、ホルモンの原料や前駆体を入れてやるという方法が王道です。
上記のとおり、炎症があって、キヌレニン経路が優勢な場合、トリプトファンが逆効果なので、セロトニンの前駆体である「5-HTP」というサプリメントが使われます。
Doctor’s Best, Best 5-HTP, 100 mg, 60菜食主義者対応のカプセル
「5-HTP」が効いたケースの体験談がこちらにあります。
服用前の脳内を、ノイズだらけのラジオに例えるあたり、ちょっと嫉妬するくらいに表現が上手い。
神経質で、考えすぎで、真面目で、生き辛い、
文面からだけでも、ストレスが多くてコルチゾールが上がっていそうな気配ですね。(セロトニンとコルチゾールは相関関係にあります、コルチゾールが増加すると、セロトニンが制御されます)
おそらく、慢性炎症があり、腸内環境も悪いと推測されるので、VBも作れていないはずです。
ということは、NAD合成もストップがかかり、クエン酸回路も回っていないはず、
つまり、ATP不足で常に疲労感を抱えている、
きっとこの人疲れやすいんじゃなかろうかと、芋づる式に推測するわけです。
ネガティブで自己否定が強く、人生が生き辛いと感じる、それは性格ではなく、単なる脳の栄養状態だとしたら、
「なんだ、栄養のせいか、じゃあ食事変えれば良いだけじゃん。」と、気が楽になりません?
根本治療は炎症を取り除くこと
個人的には「5-HTP」が効くってことは、炎症があるということの切り分けにもなるんじゃないかと思ってます。
栄養療法で、チェックすべき3つの慢性炎症は、喉、歯、腸です。
喉、歯、腸、それらは、外気や食べ物など、毎日異物と接している粘膜です。
それぞれ、必要に応じて炎症を取り除く必要があります。
・喉の炎症 → 鼻うがい、Bスポット治療
・歯の炎症 → 歯根治療、虫歯治療、歯周病治療
・腸の炎症 → プロバイオティクス、プレバイオティクス、腸の4R
長生きで若々しい人は、慢性炎症の有無の違いだった、という結果が出ています。
CRPやTNFがスパーンと上昇すれば、健康診断・人間ドッグで指摘してくれるのですが、「慢性炎症」は、全く自覚がありませんし医者もスルーですから注意が必要です。
自己否定が強く、幸せ感が少ない、ウツじゃないかしら? という人に対する治療法が、
「鼻うがいして、歯医者行って、腸ケアしましょう」 となることがあります。
一見、変ですが、栄養療法的には正しい治療法となります。
今日の参考文献
5-HTPについて、コーヒーのカフェインや、砂糖が脳にどう影響するのか、わかりやすく書かれてあります。