田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

経済の本だと思って読んだら「菌」についての本でした!
いや、経済の本でもあるのですが。

とにかく面白い本でした。

 

ブランド化、差別化って何?

とても印象的な一文がありましたのでご紹介。

人との「違い」を見せつけるためにやってきたことは、結局何ひとつ自分の身にならなかった
「人と違うことをしよう」という発想は、「人と違うものがない」ことを自覚していることの裏返しでしかない。

うまいこと言うなー。その通りですね。

「個性」というのは、つくろうとしてつくれるものではない。
つくり手が本物を追求する過程で、もともとの人間性の違いが、技術や感性の違い、発想力の違いになってあらわれて、他とどうしようもなく違う部分が滲み出て、その必然の結果として生みだされてくるものだ。

完全に同意。
差別化、ブランド化と言いますけど、先ずはやり続けることだと思います。
私もほそぼそとブログを運営してますが、更新もままならない初期のころに「差別化」「ブランド化」を考えました。

しかし、「ブランド化」とか「差別化」は、やり続けることで生まれるものです。

例えば、100人ブログをやり始めます。
1年後も続けてるのはたぶん30人
2年後も続けているのは10人
3年後はたぶん1人か2人

本モノを追及し、やり続けることで醸し出されるもの。それが他の追随を許さない「個性」であり「自分ブランド」になるのだと思います。

 

「小商い」のすすめ

ソ連の崩壊を見てもわかるとおり、マルクス主義を現実にするには無理がある。今となっては歴史が立証済み。
ではどうするか?

資本を共有するのではなく、自分が資本家となる。
作者は「小商い」を提案してます。

昔はマーケティングもコマーシャルも、大資本がなければ出来なかったのですが、
今はインターネットがあるので、個人で「商い」をすることは可能なわけです。

大資本に食い扶ちをあてがってもらわなくても、自分でセルフビジネスを立ち上げ、やり方次第では、雇われ人でいるよりも稼げる可能性があります。

全くの御意。会社の給料と年金だけが収入の頼りなんて時代じゃないですよね。
作者の実践した田舎のパン屋「タルマーリ」はまさに「小商い」です。

 

菌とはナニモノなのか?

作者は、美味しい酒種パンのための菌を探して四苦八苦します。
2年間失敗の連続です。

そして菌が喜ぶ環境は何かを模索
ある日、米を有機栽培米から自然栽培米に変更。
容器もプラスチックから職人が作った竹のザルに変えてみます。

見事、世界初の100%天然の麹菌からパンを作ることに成功。

なにかと考えさせられるくだりです。

菌は自らの意思を持ち、環境を選んでいる。
経済の「拝金主義」ではなく「拝菌主義」
仕事のために「借金」をするのではなく、地域の菌の力を借りる「借菌」で商いを行う。
「金本位制」ではなく「菌本位制」

マクロ経済の話から、パン屋経営のミクロ経済の話へ
それを見事に菌の話にかぶせてきます。
んーお見事!

ちなみに、
自然農法では元祖「ナチュラルハーモニー」の川名さんが登場しますが、私は同じ系列の「そら」さんから時々買ってます。

自然栽培 そら 有機野菜の先を目指して~無農薬野菜の通販~自然栽培とは何かを考えます

有機農法もオーガニックも、農薬は与えなくても肥料をたくさん使います。
結果、野菜が過栄養になってしまい、窒素過多で、ほうれん草によるブルーベビー事件とか過去にはありました。(有機葉野菜だから大量に食べて安全なんて嘘ですよ。)

自然農法では肥料さえ与えません。奇跡のりんごの木村さんの世界です。

自然農法で作った野菜で漬物をつけたくなりました。今度やってみよ。

 

まとめ

この本、以下の人にうってつけ。

・資本主義、ブラック企業に疑問を抱いて、経済のあるべき姿とは?と思考をこじらせた人
・腸内細菌に魅せられ、菌に人間は操られていると考える菌オタク
・自然食品とか、発酵食品が好きなナチュラリスト
・パン造りが好きな人
・セルフエンプロイ、自分ビジネスに興味のある人
・農業、特に自然農法に興味のある人

私は、たまたま「失われてゆく、我々の内なる細菌」 を読んだあとにこれを読んだので、面白さ倍増でした。

菌活、発酵食品好きはこの2冊、続けて読んでみると非常に面白いと思います。
読み終わったらきっと「拝菌主義」になっていることでしょう。

知識欲を満たせてくれて視点もくれて読後感も良い
見せ方の上手いバランスの取れた本はなかなか無いです
今年前半で一番良い本でした

 

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