「フェリチンが低いから鉄サプリ」では治療にならない
フェリチンは炎症や溶血でマスキングされます。
マスキングとは、何らかの別の要因で数値が変動することです。
例えば、
フェリチン 40
AST 28
ALT 26
血清鉄 110
直接ビリルビン 0.2
総ビリルビン 2.0
というデータがあったとします。
もし、これが普通の一人暮らしのOLさんのデータだとしたら、溶血でフェリチンがマスキングされていることを疑います。
問題はフェリチンではなく、まずは溶血の原因を探ることです。
溶血の原因が、酸化ストレス(活性酸素)なのか、細胞膜の脆弱性(VE、EPA不足)なのか。
酸化ストレスであれば重金属汚染の可能性か、細胞膜の弱さならビタミンE・タンパク質の不足を疑います。
溶血についてはこちらでも書きましたのでご参考ください▼
【栄養療法】溶血(ようけつ)がある場合に必要な栄養素とその判断について | ビタミンアカデミー
例えば、、
ここでフェリチンが低いからと言って、安易に鉄サプリを盛ると、さらなる活性酸素の原因になり、溶血が亢進する可能性があります。
溶血がひどくなれば、さらにフェリチンが上昇するでしょう。
「鉄サプリを飲んだら、フェリチンが上がった!」でもこれは治療成功ではありません。
溶血がひどくなったのでフェリチンが上昇しただけです。
おそらく、根本原因が消えていませんから体感は変化なし、ひどい場合は体調悪化というケースもあるでしょう。
もしも、上記のデータが運動、特にマラソン好きの方であれば、溶血の原因は運動かもしれません。
食事内容を効いて、炭水化物多めでアルコールも飲む方であれば、ALTのマスキングを疑います。
毎日の便通を聞いて、腸内環境が悪化していることが推測されれば、ビタミンB不足によるALTのマスキングは確実です。
膣カンジダか水虫の既往があれば、腸カンジダも確実にあります(自覚症状がなかったとしても)
この場合、脂肪肝によってフェリチンがマスキングされていると推測します。
となれば、まずは肝臓の炎症を治すための食事の指導とビタミンBの補充、腸内環境の改善が先です。
鉄サプリは腸内環境を悪化させる可能性があるので、その後です。
もし、脂肪肝、腸内環境の改善をせずに鉄サプリを盛ったら?
おそらく鉄サプリが腸カンジダを悪化させ、体調は悪化。
肝臓の炎症によりフェリチンはさらに上昇するでしょう。
フェリチンは上昇(治療は成功)したかに見えるけど、体調はちっとも良くならない、という残念な結果になります。
まだフェリチンで消耗してるの?
フェリチンが「貯蔵鉄」として知られるようになりました。
「フェリチンが低い」ことは確かに鉄欠乏性貧血の目安にはなりますが、じゃあ「フェリチンを高くする」ことが良いことかというと、むしろダメな場合が多い。
フェリチンはもともとは悪性腫瘍マーカとして利用されていた数値です。
数値の読みには正しい知識と全体を俯瞰する力量が要ります。
「フェリチン」さえ上昇すれば、治療になると信じて疑わない方がいて、それはちょっとまずいんじゃないの?と思います。
マスキングを解き明かすには、問診が絶対不可欠です。
その方の食生活、便通、腸内環境、運動の有無で数値は変わってくるのですから。
なにがなんでも高フェリチンにこだわると、問題の根本を見失うどころか、間違ったサプリメントで症状を悪化させることがあります。
フェリチン単体の数値だけで、判断することは要注意ですぞ。