自己ステロイド過多による中心性肥満
ストレスホルモンには、活性型のコルチゾールと
非活性型のコルチゾンがあります。
コルチゾン、コルチゾール、これらを総称して
「グルココルチコイド」といいます。
なんらかの異常によって、脳下垂体から
副腎への命令(ACTH)が異常に多くなると、
副腎がグルココルチコイドを
たくさん産生するようになります。
この状態を「クッシング症候群」といいます。
クッシング症候群とは、
過剰なグルココルチコイドが
全身に慢性的に作用して、
特徴的な身体所見を生じる疾患群です。
クッシング症候群の外見的な特徴は
お薬のステロイドを使ったときの症状とそっくり。
ストレスホルモンのコルチゾール自体が
ステロイドホルモンだから当たりまえですね。
ステロイド剤を使って出る副作用は
医原性クッシング症候群と言えます。
(自然発生的なクッシング症候群では
副腎機能が異常亢進するのに対し
医原性では外からホルモンが追加されるので
副腎機能が低下するという違いがあります)
ストレスが多く、コルチゾールを常に
たくさん使っているような方(副腎疲労初期・抵抗期)は、
クッシング症候群と似たような症状、所見が出てきます。
コルチゾールは自分の身体の中で作られる
ステロイドホルモンですから作用は同じだからです。
手持ちの内分泌疾患ハンドブックによると、
クッシング症候群の見た目の特徴は、
① 満月様顔貌
② 中心性肥満
③ 水牛様脂肪沈着
④ 皮膚菲薄化
⑤ 近位筋の萎縮
難しい言葉の羅列ですので、分かりやすく、
易しい言葉で置き換えてみますと、
① 顔が丸くなる、顔がでかくなる
② 腹回りに脂肪がつく、腹だけ太る
③ 背中にモリッと肉がつく、背中が太る
④ 肌にはりがなくなり、艶がなくなる
⑤ 体幹筋肉が衰えて躓いたり転んだりが多くなる
見た目以外の部分は?というと、
① 耐糖能異常
② 月経異常
③ 浮腫
④ 易感染性
⑤ 精神異常
これも易しい言葉で置き換えますと、
① 低血糖症や糖尿
② 生理が不順
③ 浮腫みやすい
④ 風邪ひきやすい
⑤ うつっぽい
となります。
ガイドブックにあった図のリアリティたるや。
「中心性肥満」
嫌な言葉ですね。
胴体だけ太って手足は変わらない、
むしろ筋力低下して細くなる
(かえって腹回りの太さが目立つ)
先日の分子栄養学実践講座で、
高橋先生による脂質代謝の講義がありました。
良い肥満と悪い肥満、内臓脂肪と皮下脂肪の
生理的な作用の違いについて基礎的な部分を
網羅したとても良い講義でした。
その講義中、高橋先生が
「なぜ内臓脂肪が増えるのか、
腹周りだけの脂肪細胞が大きくなるのか、
原因、トリガーは分からない。」
というコメントがありましたが、
個人的には、コルチゾール過多による
「中心性肥満」もその理由の一つではないか
とにらんでいます。
「ストレスが強いと痩せないよ」
という事実は多方面から証明されております。
腹回りだけ太って
背中がもっこりと分厚く、
なんだかウツっぽい。
そんな方は、むやみやたらに
ダイエットに躍起になると
逆にストレスホルモン過剰になって
逆効果になりかねないのでご注意ください。