ビタミンAは3つの形を覚えましょう
昨日に続き、ビタミンAの話題です。
亜鉛不足があればビタミンA不足の症状が出る理由 | ビタミンアカデミー
ビタミンAには主に3つの形があります。
①レチノール、②レチナール、③レチノイン酸 です。
① レチノール
「レチノール」は肝臓に蓄えられたり、血液の中を運ばれたりするビタミンAです。
レバーにはビタミンAが豊富ですが、
あれは鶏さんや豚さんが肝臓に蓄えたビタミンA(レチノール)をいただいているわけですね。
人参のカロテンが変化するのもレチノールです。
ビタミンAは「レチノール」の形で身体の各所に運ばれます。
ざっくり大雑把に言うと、レチノールは輸送されるときとか、貯金されるときの形状と覚えます。
② レチナール
レチノールが活性化されると「レチナール」となります。
これがいわゆる眼に効くビタミンAです。
アップル製品の液晶をRetina(レティーナ)と言います。
レティーナ・ディスプレイの名称は、眼の網膜を意味する英語「Retina」です。
ビタミンAも語源は同じく、網膜の「Retina」から取って「レチナール」となりました。
あと腸粘膜の免疫細胞(IgA)なんかにもレチナールはとっても重要ですね。
③ レチノイン酸
3つ目の「レチノイン酸」、これはビタミンAの最も活性化した形で遺伝子に作用します。
遺伝子において何をしているかというと、主に細胞の「分化」です。
身体を構成する30兆を超える細胞の一つ一つはすべて同じ遺伝子をもっています。
持っている設計図は全部同じということ。
でも、神経の細胞は神経になり、胃の粘膜の細胞は胃の粘膜の細胞になりますよね。
何の細胞になるのかを決める作業、これを細胞の「分化」といいます。
分化のスイッチを入れるのがビタミンAである「レチノイン酸」の仕事です。
ですので、ビタミンA(レチノイン酸)がうまく使えないと細胞の分化に支障が出ます。
例えば「ほくろ」
メラノサイトだか何だかの細胞が分化に失敗して、そのまま増殖しちゃうと「ほくろ」になるそうな。
遺伝子に作用するということは、ステロイドと一緒なわけで、それだけ強力ってことです。
ビタミンAの過剰摂取が問題と言われるのは、このレチノイン酸を実験に使った論文が一気に有名になっちゃったせい。
遺伝子に作用するビタミンAの最終形態(しかも後戻りできない形)を直接投与しちゃったわけで、そりゃ問題が起きるよねっておハナシ。
レチノールとレチナールに関しては、人間の身体で相互変換され、
自動で過不足が調整されるようなシステムになってますから問題なしですよ。
和牛のさしとビタミンA不足
和牛の脂、筋肉のあいだに入った白い脂は「さし」と呼ばれています。
実はあの「さし」は牛の餌を意図的にビタミンA不足にすることで生まれるそうです。
本来、食肉の大部分は骨格筋ですから、脂肪はほとんどないはずです。
飼育中期で意図的にビタミンA不足を飼料を与えると、筋肉内の脂肪細胞が増えるそう。
詳しいメカニズムは不明ですが、
ビタミンAの細胞に対する分化への影響がなにかしら関係しているのは間違いない。
和牛の見事なさし、あの筋肉のあいだにある脂肪細胞は、
細胞の分化に失敗した結果、生まれたものなのかもしれません。
(参考にした文献が1990年代のものなので、ビタミンA不足の飼料で飼育して霜降り肉にするというこの手法が今でも使われているかは不明です)
今日のまとめ
- ビタミンAにはおおまかに3種類ある。レチノール、レチナール、レチノイン酸
- レチノールは輸送体、レチナールは腸粘膜の免疫や目の健康、レチノイン酸は遺伝子に作用(特に分化のステップ)