カルシウム・リン代謝異常と甲状腺ホルモンの関係
甲状腺機能亢進症の方のデータを見て、気がついたことの備忘録です。
ある方(40代)の血清カルシウムとリン
カルシウムが低く、リンが上昇しています。
カルシウム代謝を判断するのには以下の計算式を使うことが多いです。
(カルシウム) × (リン) = (30以上の場合はカルシウム代謝異常を疑う)
この方の場合は、8.9 × 4.6 ≒ 41 と明らかにナニかがありそう。
検査をおすすめしたところ、甲状腺機能亢進症でした。
TSHが標準目安の 1.0 を大きく切って 0.35、FT3 は 4.70 まで上昇しています(目安は3.0です)
カルシウム代謝異常かどうかは、ALP(アルカリフォスファターゼ)の値も参考にします。
骨粗しょう症の傾向にあればALPが高くなります。
しかし、この方の場合はALP140程度(健康の目安となる参考値は180)で決して高いとは言えずALPは判断材料としては使えませんでした。
骨と関係の深い甲状腺ホルモン
ちょっと復習。
カルシウム、リンの代謝に影響を与えるものは以下の3つ。
・PTH(副甲状腺ホルモン)
・カルシトニン(甲状腺から分泌されるホルモン)
・ビタミンD
PTHとカルシトニンは働きが真逆だからややこしい。
・PTH(副甲状腺ホルモン)は血液中のカルシウムを上昇させるホルモン
→骨からカルシウムを溶かし、腸でのカルシウム吸収を促進させる
・カルシトニン(甲状腺から分泌されるホルモン)は血液中のカルシウムを低下させるホルモン
→血液から骨へカルシウムを吸収させて、腸でのカルシウム吸収を抑制する
ここで重要なポイントなのだが、甲状腺ホルモンは骨形成を活発にして血液中のカルシウムが低下するけれど、骨芽細胞が活発になりすぎることで破骨細胞も活性化する。
結局、甲状腺機能亢進になって甲状腺ホルモンが多すぎても骨粗しょう症傾向になるということ。
甲状腺機能低下でも、甲状腺機能亢進でも、どっちに転んでもカルシウム代謝異常になりやすいということのようです。
というわけで、血清カルシウムと血清リンを見て、あれ??なんか変だぞ・・と思えば、甲状腺機能は要チェックとしています。
骨密度が低い場合も同様です。
本人が気がつきにくい甲状腺異常
自身が気がつかないうちに甲状腺に問題を抱えている人はすごく多いです。
健康診断や人間ドッグでは甲状腺を検査することがありませんから、データから「怪しいな」と感じたら専門医での検査をおすすめすることがあります。
私の経験だと4~5名に1人は見つかります。
ご本人の主訴が第一ですが、驚いたことにほとんどの方が自覚症状がありません。
「ちょっと疲れやすいけど、年齢のせいかなと思ってた」とみなさんおっしゃいます。
自分では気がつかなくても、潜在的に問題を抱えている人は多そうです。
甲状腺機能に関係した症状は以下です。
・疲れやすい
・月経不順
・冷え
・便秘、下痢
・浮腫み
・睡眠の質の低下など
一般的によくある症状が多く、甲状腺の問題であることが気がつきにくい。これがクセモノ。
甲状腺は代謝をつかさどるホルモンですから、甲状腺ホルモンに問題があれば、どんなに優れた食事療法もサプリメントも効果は出ません。
まずは甲状腺の異常を治療することが第一です。
どの数値を見て「怪しいな」と思うかですが、経験上、血清カルシウムと血清リンはひとつのヒントになるのではないかなと思っています。
甲状腺機能と骨代謝には密接な関係があるので、血清カルシウムと血清リンの値を確認してカルシウム代謝異常が疑われれば、甲状腺機能にも何らかの異常があるのでは?と推測が可能になります。
カルシウム、リンと甲状腺ホルモンの関係については下記でも書いていますのでご参考ください↓
歯が着色しやすいのはなぜか?【カルシウム代謝異常の5つの原因】 | ビタミンアカデミー