ガンに人参ジュースは逆効果という事実

ガンに人参ジュースは逆効果という事実

なぜか、ガン予防と称し、もしくはガンと診断された方が、人参ジュースを飲んでいるのをよく見受けます。

でも、人参ジュースガンに良い(ガン抑制に効果がある)というとかなり疑問。

「ガンに人参ジュース」、この図式は、おそらくゲルソン療法の影響でしょう。

ゲルソン療法とは、ドイツのゲルソン博士が、(日本の戦前くらいに)確率した治療法で、大量の野菜からカリウムを摂取することでガンなど難治性の病気を治したとされる治療法です。

生の野菜を大量摂取しますので、ローフーディストや、ベジタリアンの方には認知度が高い。

このゲルソンさん、米国や欧州での評価はどうかというと、Wikiを読めばわかるのですがかなり不評です。

おそらく、野菜の中では比較的糖質が高く、ジュースにしやすい、見た目がヘルシー、年中安定的に入手しやすい、この辺がジュースの原料として人気になった一因でしょう。

人参ジュースが健康に良いというイメージ、あのオレンジ色の鮮やかなベータカロテンのイメージからきているのかもしれません。

ベータカロテンはガン発生を抑制しない

ベータカロテンはどうやらガンに効かないみたい、と分かってきたのは1990年代後半あたりからです。

それまでは、ベータカロテンといえば優れた抗酸化物質で抗がん作用があると信じられていました。

1996年に米国国立がん研究所が「ベータカロテンは、がん予防効果がないだけでなく、肺がんのリスクを高める」と発表。

Alpha-Tocopherol and beta-carotene supplements and lung cancer incidence in the alpha-tocopherol, beta-carotene cancer prevention study: effects of base-line characteristics and study compliance.

喫煙週間、飲酒週間のある男性に対し、5〜8年間に渡ってベータカロテンの補充を行ったが、ガン予防の効果がないどころか、プラセーボ群と比較すると肺がん、胃がん発症率が増えたそうです。

 

きわめつけは、2010年に発表されたこちらのシステマティックレビュー論文。

Beta-carotene supplementation and cancer risk: a systematic review and metaanalysis of randomized controlled trials.

システマティックレビューとは、過去に出された複数の論文を徹底的にレビューしてまとめたもので信用性の高いものです。

膵癌、結腸直腸癌、乳がん、前立腺癌、皮膚癌の発生率について、ベータカロテン補給による影響はなし。

「ベータカロテン補給は癌予防に有益な効果はない。」と言い切っちゃってます。

 

ビタミンAは遺伝子の発現や細胞の分化に必要な栄養素です。

だとしたら、ビタミンAの前駆体であるベータカロテンの補給は、抗がん作用がありそうな気がしますが、実際は「抗がん作用はない」が結論。

ベータカロテンがガンに効かない理由

ベータカロテンが、プロビタミンA(ビタミンAの前駆体)と言われるのは、体内でレチノールに変化するためです。

レチノールは細胞内で、レチナール、レチノイン酸と代謝されます。

最終的にレチノイン酸が一番効力が強く、遺伝子の発現や細胞の分化に寄与します。

ビタミンAの代謝についてはこちらでも書きましたのでご参考ください▼

【ビタミンA】手のひらが黄色いのはタンパク質不足かも | ビタミンアカデミー
ミカンを食べて肌が黄色くなるのはタンパク質不足 時々、妙に肌の色が黄色い人がいます。 タンパク質不足でカロテノイドの色が出ちゃってる人です。 カロテノイドは、レチノール(ビタミンA)に変換されます。 変換されたビタミンAは、いったん肝臓に蓄えられ、そこから必要に応じて身体の各部位に運ばれます。 この時、ビタミンAを運搬するのが、 RBP(レチノール・バインディング・プロテイン)、日本語で「レチノー

 

ビタミンAの作用によって、遺伝子の発現や細胞の分化が正しく行われれば、がん細胞の増殖抑制やアポトーシス(ガン細胞自滅)に効果があります。

ところが、ガン幹細胞は、レチノールからレチノイン酸に代謝する酵素が欠損していたり、細胞内にレチノールを運ぶタンパク質(RBP)が欠損していることが多い。

理由は簡単ですね、ガン幹細胞自体が異常細胞なので、ビタミンAを正しく代謝できる能力がない、

よって「ベータカロテンはガンに効かない」です。

つまり、正しく代謝できる能力のある細胞に対しては有効ですが、すでにガン化した細胞には効果が薄いということらしい。

たとえ正しく代謝できたとしても、カロテンからレチノールへの変換効率はあまりよくありません。

ビタミンAに限らず、植物性の栄養素は効率が悪いことが多いです。

 

 

米国国立がん研究所の発表にありました「肺がん、胃がんは、ベータカロテンの補給によって発生率が上昇」の理由が知りたいところです。

一説によると、抗酸化物質は、自らが酸化されてしまったあと(還元力を失ってしまったあと)には、逆に酸化物として働くことがあると言われています。

脂溶性の抗酸化物質は、ビタミンCのような水溶性の抗酸化物質と違って、抗酸化力を失ったあとでも体内に残留時間が長い。

体内に残留した使用済みの脂溶性抗酸化物質が、逆に細胞に対して酸化ストレスを与えるのではないか?と言われているようです。

ただし、これも真相は定かではなく論争途中といった感じ。理由はよくわかってません。

人参ジュースに薬効を求めるのはナンセンス?

例えば、病状が進行してしまった患者が、咀嚼・嚥下も難しくなり食事が困難な場合に、食事の代替、エネルギー源として人参ジュースを摂取するのは納得できます。

しかし、人参ジュースに特定の機能性やガン細胞を退治するという薬効を求めるのはナンセンスだと思います。

別に人参が身体に悪いと言っている訳ではありません。

人参は栄養価も高く滋養ある食品ですし、他の食材と一緒に食事として摂る、それで十分では?と思うわけであります。

大量の人参を買い、毎日ジューサーで絞って飲むのは、食事・水分補給・嗜好品としての一環としてならアリですが、特定の(例えば抗がん作用などの)薬効を求めるのは、ちょっと違うかも。

缶入りの人参ジュースも同じです。

飲む理由は「美味しいから」で良いと思います。

 

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