「牛乳は体に悪いよ説」
牛乳が身体によくないとする説ですが、いろいろありますよね。例えば、
・乳牛のホルモン剤投与(エストロゲン過剰で乳がんの原因説)
・牛乳飲む人ほどカルシウム脱灰、骨粗鬆症になる(カルシムパラドックス)
・乳たんぱく「カゼイン」不耐性(胃腸機能の劣化で他の栄養素の吸収阻害)
・乳糖不耐性(牛乳でお腹が調子悪くなる、日本人に多い)
・乳牛そのものの栄養状態が悪い(抗生物質などで汚染された動物のお乳なんて云々)
・他の哺乳類のお乳をのむのは人間だけ(理論的っぽいけどナニガナンダカ??)
私が知ってる分をざっと列記しただけでもこんな感じです。
牛乳は本当に身体に悪いのか?
北欧など、牛乳・乳製品を大量に摂取する国では、骨粗しょう症の発生率が多いという、いわゆる「カルシム・パラドックス」説
これもよく考えられた理論ではあるものの、実は確かなエビデンスがないのです。否定してる論文もよく見かけます。
牛乳の高リンがカルシウムを奪い骨粗鬆症の原因である説を検証したメタ分析では関係なしと結論。
デンマーク、スウエーデンなどは乳製品消費大国で、骨粗鬆症の発生率も高いのですが、日照時間が少ないのでビタミンD不足もありそうですし、牛乳単体で犯人扱いしても良いかというと疑問だったりします。
また、九州大学による「久山町研究」では、60歳以上のお年寄りで、牛乳、乳製品の摂取量が多い人ほど認知症の発生率が少なかったとレポートしています。
カルシウム量が適切だと神経細胞のはたらきが働きが良くなるのでアルツハイマーが減るのです。
「久山町研究」とは、1961年以来、人口8,000人の町で食事と病気の関係を延々とトレースしているコホート研究で、現在も継続中です。
九州の田舎町に住む60代が対象ですから、ピザも食べないだろうし、カフェラテを飲む機会も少ないでしょう。
もともと乳製品の摂取量が少なそうな高齢者に、牛乳やチーズの摂取を推奨するのは、たんぱく質も増えて良い結果が出ると思います。
牛乳が絶対ダメー!という一元的な見方には反対です。
良い面も悪い面もある、これはどの食品でも同じですから。
それを踏まえたうえで、私が牛乳をお薦めしない理由は、もっと別のところにあります。
牛乳はカルシウム対マグネシウムのバランスが悪い
分子栄養学的に見た牛乳の悪いところ、それはカルシウムとマグネシウムのバランスが著しく悪いところです。
カルシウムはビタミンCやビタミンBと違って、単体で結果を出せる栄養素ではありません。
重要なのはマグネシウムとのバランスです。
カルシウム、マグネシウムの摂取比は2:1が理想と言われています。
「カルマグ」のサプリメントも、この比率で商品化されています。
しかし、分子栄養学的にはカルシウム:マグネシウムの比率は1:1を目安にしたほうが良い結果をだせます。
理由は簡単で、現在の私たちの食生活と環境では、圧倒的にマグネシウム不足が発生しやすい状況にあるからです。
栄養療法でも、マグネシウムサプリを飲んだら、長年の副腎疲労、慢性疲労の症状が軽減、回復したという症例が多い。
さて、ここで牛乳をはじめとする乳製品のカルシウム:マグネシウム比をみてみましょう。
ご覧の通り『カルシウム多すぎ、マグネシウム少なすぎ』です。
カルシウム:マグネシウムの理想比率 2:1 から大きくかけ離れており、結果的にマグネシウム不足になるのがよく理解できるかと思います。
体調不良を訴える人のほとんどがマグネシウム不足に陥ってます。
そこに牛乳をはじめとする乳製品を推奨することは、さらなるマグネシウム不足になる原因を増やすことになります。
牛乳、乳製品を食べてはいけないわけではありませんが、マグネシウム不足の疑いありの人には、乳製品はおすすめできないのです。
ちなみに、日本人のほとんどがマグネシウム不足なので『日本人は乳製品は非推奨』と言ってるのと同じです。笑
カルシウム:マグネシウムの比率が悪い場合
カルシウムは普段は細胞外で待機していて、必要な時に細胞内へ入り、細胞システムのスイッチをポチッと押します。
カルシウムが出入りする細胞の窓口を「カルシウムチャンネル」と言います。
「カルシウムチャンネル」を開け閉めするのがマグネシウムです。
カルシウムとマグネシウムの比率が崩れると、細胞内と細胞外のカルシウム濃度が乱れます。
細胞システムの調整がうまくいかないので細胞の機能自体が狂います。
疲労感、足がつる、目がぴくぴく、いらいら、きれやすい、不眠、肩こりなど。
これら全部マグネシウム不足が影響しています。
カルマグ比率のバランスが良い食事とは?
日本のお水は軟水で味がまろやかで美味しいのですが、ミネラル不足になります。
それでも日本人がマグネシウム不足にならなかったのは、海藻や大豆など、和食の素材がマグネシウム豊富だからです。
マグネシウムの供給源になる食品は、昆布、あおさ、海苔、大豆、ひじき、イワシ、アサリなどです。これらはカルシウムも含まれ、カルマグのバランスが良い食品と言えます。
さて、みなさま、過去数週間の食事内容を思い出してください。
昆布、あおさ、海苔、大豆、ひじき、イワシ、アサリ、これらを毎日食べましたか??
ヨーグルト、チーズ、牛乳を食べる回数と、どっちが多かったでしょうか??
朝ごはんはシリアルに牛乳かけて、ランチはピザで、おやつにスタバのカフェラテ。
これだとカルシウム対マグネシウム比が悪く、完璧な(?)マグネシウム不足です。
糖質制限で失敗する人も、マグネシウム不足が原因であることが多いです。
糖質制限をすると、チーズの摂取量が増えます。
チーズは、手に入りやすい高タンパクなオヤツとして手軽なので。
普段から高タンパク食で、消化酵素にマグネシウムの需要が増えているところに、さらにマグネシウム不足になる要因を追加するので、ミトコンドリア機能がうまく回らずマグネシウム不足の症状が出ます。
身体のエネルギー工場であるミトコンドリアの機能にもマグネシウムが重要な働きをします。
ミトコンドリア機能の低下は、エネルギー不足による慢性疲労、代謝の低下、免疫の低下です。
乳製品を常食することの分子栄養学的危険性、それはマグネシウム不足です。
牛乳、チーズ、ヨーグルト、どれも添加物が少なくて、高たんぱく質で、美味しくて、とても良い食材ですが、嗜好品として認識しておくくらいがちょうど良いかと思います。
同じくらいマグネシウム不足には十分配慮するようにしてください。
私が参加している分子栄養学実践講座でも推奨図書として挙げられている一冊。
監修されたのが熊本出身の料理人という、なんだかご縁を感じる本です。