ケトン体ダイエットは有酸素運動と相性が悪い
スポーツする場合に、糖質制限は良いのか悪いのか?という疑問がありました。
この疑問について「有酸素運動とケトン体ダイエットは相性が悪い」という、オーストラリア国立スポーツ研究所の最近(2017年2月)の発表が、ものすごく分かりやすい内容だったのでご紹介します。
かなりレベルの高いアスリート(競歩選手)21名が被験者で、以下の3つのグループに食事内容を分けて、3週間のトレーニングを行ったそうです。
1, 高炭水化物グループ 糖質が摂取カロリーの60〜65%
2, Periodizedグループ 糖質量は高炭水化物グループと同じ、摂るタイミングを細かく変えていく食事法
3, 低糖質・高脂質グループ 糖質50g以下、脂質が摂取カロリーの75〜80%
糖質量が1日に50g以下というのは、以下のいずれかの量です。
・白ご飯130g ご飯茶碗に軽く一杯
・6枚切りのトースト2枚
1日に食べる炭水化物が「ご飯茶碗に軽く一杯」みたいな、以前私がやってた糖質制限に近い感じ。
さて、全員に同じ内容のトレーニングを3週間行った結果ですが、
・低糖質グループは、トレーニングの成果・タイムがダウン(←意外!)
・低糖質グループは、疲労感がアップ(←意外!)
という、ちょっと残念な結果になっております。
3週間のトレーニング後の、10kmレースの結果です。
高糖質グループ(HCHO)、Periodizedグループ(PCHO)はいずれもタイムが縮小。
トレーニングの成果UP。
ところが、低糖質・高脂質グループ(LCHF)だけ、タイムがダウン。
ここが特徴的なんですが、低糖質・高脂質グループ(LCHF)は酸素消費量が増加しております。
酸素効率が悪くスタミナがなくなっています。
VO2とは酸素摂取量で、有酸素運動では持久力を決める大事な要因です。
ケトン体質になったことで、酸素の消費効率が悪化、持久力が低下してます。
クエン酸回路は酸素を必要としますので、よくよく考えたらアタリマエなんですね。
ローカーボ&高脂質食は、エクササイズの効率を悪くする、おそらく原因は酸素消費量が上がることに起因する、とのこと。
なんともナルホドーな結論でございました。
有酸素運動には適度な炭水化物を
理論上では、嫌気性解糖ならATPのエネルギー玉が2個で、クエン酸回路なら32個です。
ケトン体なら、1個の脂肪酸から130個のATPが作られます。
当初、これを考えたらウハウハでしたw
糖質制限でケトン体質になれば、ランニングをやってる時に、無敵に疲れなくなるんじゃないの??みたいな、まるで夢のようなハナシ。
ところが現実は逆でした。
とにかくスタミナ切れが半端ない。
身体に負担がかかって、アンチエイジングとは逆行している気がしました。
この論文を読んで、ハタと基本に返ったのですが、運動のエネルギーはグリコーゲンなんです。
このアタリマエの事実に気がついたわけですな。
いろいろな健康情報、食事療法がブームになるたびに思うのですが、疑問に思ったときは、基本的な生化学に立ち返ると、なるほど納得ということがよくあります。
で、結論ですが、マラソンなど有酸素運動にガリガリの糖質制限はアウトです。
意識高い系の人に限って、朝ごはんはバターコーヒーだけで、ジョギングとかやっちゃうけど、身体には負担になるのであんまりオススメできません。
有酸素運動の前には、適度なカーボ食が正解。
もちろん、精製度の低い白米や、繊維質の多い根菜など、糖質のクオリティには気を配るのが前提ですよ。
これ読んで「そっかー、じゃあパスタ食べても、ケーキ食べてもオッケーじゃん!」となるような低レベルの方は、当サイトにはいらっしゃらないと思うので、そこは省略。
以上、自分の感じていた疑問点が、すっきり腑に落ちた論文でございました。