「ホルモンのピラミッド」という考え方
更年期のさまざまな不快な症状、意識したいのは女性ホルモンだけではありません。
わたし自身がもうすぐ54歳。同年代の女性から更年期障害のご相談をうける機会が多いです。
更年期の不快な症状を、栄養素で改善する手法は何か?と聞かれた際に、必ずホルモンのピラミッドについてお話しています。
宮澤先生の”治療のピラミッド”の簡易版です。
見てのとおりです。
更年期のトラブル解消の話をするときに、”ホルモン”と言えば、エストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモンをイメージする方がほとんどでしょうが、ホルモンは性ホルモンだけじゃあありません。
実は、インスリンやコルチゾールなどホルモンの不備が、不快な症状の背景になっています。
これは経験則。
分子栄養学実践講座の受講生は、低血糖や副腎疲労について徹底的に学ぶわけですが、知識をつけて食事と生活習慣を改善していくうちに、連動して女性特有の不具合が改善する方が多いのです。
更年期に不調を訴える方は、このホルモンピラミッドの下層階を(無自覚に)ほったらかしにしていた方が多いです。
不摂生を体力と余力のあるエストロゲンで誤魔化せていたか、もしくは、無自覚のうちにコルチゾールやインスリンを酷使していたけれど、それがデフォルトの人生で麻痺していたとか、です。
コルチゾールとインスリンをほったらかしして、甲状腺ホルモンと性ホルモンをいじるとピラミッドは不安定さを増します。
つまり、整えるときはこのピラミッドの下から積み上げるようにケア方法を組み立てていくと良いということ。
副腎ケアでコルチゾール、耐糖能改善策でインスリンを制する。そして甲状腺ホルモンをケアしていく。
最後に性ホルモンです。
この考え方のメリットは、インスリンとコルチゾールは自分でケア可能という点です。
まずは、このベースとなる下層をある程度整えてから、甲状腺ホルモンや性ホルモンへ着手します。
もしくは、下層を整えながら、甲状腺ホルモンや性ホルモンをその分野専門のドクターと連携しながら整えていくといった具合。
自身でやる下層階の立て直しにはどうするか?
インスリンとコルチゾールに関するケアは、例えば以下のような感じ。
コルチゾールを整えるには?
- 十分な睡眠をとる 12時前に就寝、午前の太陽を浴びる、リズム運動、朝ごはんを食べて概日リズムを整える
- ストレスを軽減する習慣・趣味を持つ ヨガやリラクゼーション、趣味、アクティビティ
- 食生活とサプリメントで栄養状態を整える ビタミンC、ビタミンB群、マグネシウム、亜鉛、タンパク質、ビタミンD、など
- 慢性的な炎症をケアしておく 歯周病、歯根治療、ピロリ菌、後鼻漏、副鼻腔炎、腸の炎症など
- 運動する習慣を作る ウォーキング、ヨガ、水泳などの軽度の運動や、心地よいと感じる運動
- カフェイン摂取の制限 コーヒーやエナジードリンクなどを控える
インスリンの分泌を整えるには?
- 精製された炭水化物をコントロールする、白米、麺類、小麦、白砂糖など
- 食物繊維、特に水溶性食物繊維を積極的に摂る キノコ類、海藻類、ゴボウなど
- 脂質の質にこだわる 魚介類、亜麻仁油などオメガ3、中鎖脂肪酸の摂取、サラダ油を控える
- 食事のリズムを整える 食事を抜かない、極端な断食やダイエットは控える
- 人生を楽しむ、リラックスする 継続的な緊張、交感神経優位状態は血糖値を上げる
- 肥満、太りすぎを改善する 脂肪細胞は炎症性物質を作り、耐糖能低下を起こす
- 運動の習慣、慢性的な炎症のケア(←コルチゾールケアを同じ)
慢性炎症(歯周病や上咽頭炎、ピロリ菌)やカフェイン摂取の禁忌あたりは分子栄養学的な特徴がある部分かもしれませんが、どれも健康を維持するために、昔から言われていることばかり。普遍的なリストです。
更年期とは、いったん自分の人生を見直し、身体を整えて次のライフステージへ準備をする期間。
身体がメッセージをくれたら、ホルモンのピラミッドを思い出して、下から積み上げるようにケアをしてくださいませ。