キレート鉄(フェロケル鉄)について
鉄のサプリメントであるフェロケル鉄とは何か?簡単に解説しますね。
鉄のサプリメントにもいろいろあって、現時点でとても多く出回っているのが「フェロケル鉄」という種類のものです。
”フェロケル”というのは商標です。米国のある会社が開発しました。
日本だと「キレート鉄」という呼んでいる人も多いですね。
”キレート”とは、蟹ばさみの意味です。
鉄はそのままだと活性酸素を出す、とても危険なミネラルなので、なにがしかの加工が必要なんです。
そこで「グリシン」という最も単純な構造のアミノ酸で、サンドイッチ(キレート)させたら、これがいい感じで安定したわけです。
鉄は活性酸素の発生源になるので、鉄サプリメントで胃が気持ち悪くなる人が多いです。
その点、フェロケル鉄はアミノ酸でサンドイッチさせた格好ですから、胃に障りません。
フェロケル鉄の問題点
フェロケル鉄の問題点は、吸収率が良すぎることです。
ほとんどの栄養素は、小腸の粘膜から吸収される際に、それぞれ専用の玄関を通ります。
特に、鉄は体内で微妙なバランスで保たれているので、鉄専用の玄関以外からは入れない仕組みがあります。
ところが、フェロケル鉄はアミノ酸でサンドイッチしてあるため、どうも胃腸がアミノ酸だと思って吸収してしまう模様。
下記は、フェロケル鉄を投与したネズミの小腸の柔毛顕微写真です。
鉄が吸収良すぎて渋滞しています。
通常、貧血・鉄欠乏の際に鉄のサプリメントを摂取すると、まずヘモグロビン値や血清鉄が回復して、フェリチン値は最後に回復します。
なぜならフェリチンは”貯蔵の鉄”ですから。
ところが、フェロケル鉄を摂ると、フェリチン値が先に上昇することがあります。
たぶん、あまりに吸収が良すぎて、小腸粘膜で渋滞した鉄が血中に漏れるためでしょう。
フェロケル鉄の賢い使い方
吸収が良すぎるというのもまた問題です。
鉄欠乏がひどい場合に、とりあえず吸収の良いものでさっさと鉄を入れたい!という場合、フェロケル鉄は使えます。
けれど、長期利用は疑問です。
フェロケル鉄自体が、自然界に存在する形でもないですし。
貧血・鉄不足が解消したら、レバーや赤身肉など自然な食べ物で鉄を使い回せる身体にする。
サプリメントを利用するに場合でもスポット利用にしたいところ。
鉄という非常に扱いの微妙なミネラルを、わざわざフェロケルで長期摂取する理由はないと思います。
どれくらいの期間を目安に?という疑問ですが、赤血球の寿命が4か月なので、だいたい3ヶ月~4か月といったところ。以下参照↓
鉄のサプリメントは賢く選ぶこと
フェロケル鉄のメリットは何と言っても安いこと。
安いからめっちゃくちゃ流通してます。
だけど、その吸収率が良いという特徴ゆえのデメリットもあります。
栄養素は「量」が足りないのも問題ですが、栄養素がどれだけ上手に使えるか?という「利用効率」も重要です。
量だけ十分にあっても、うまく使えなきゃお話になりません。
鉄の場合は、余剰な量が悪さをします。鉄はガンとも関係してますしね。だから扱いに注意が必要。
コストがかけられるなら、最初からヘム鉄を選ぶも良し、
コストがかけられないなら、リスクを受容してフェロケル鉄で短期決戦に持ち込むなど、その特徴を理解したうえで使いましょう。
今日のポイント
- キレート鉄(フェロケル鉄)はアミノ酸(グリシン)で加工した鉄サプリメント
- キレート鉄(フェロケル鉄)は吸収率が良い
- キレート鉄(フェロケル鉄)はフェリチン値だけ先に回復することがある
- 鉄のサプリメントの長期利用は注意が必要