『安保徹のやさしい解体新書』 安保 徹 (著)

『安保徹のやさしい解体新書』 安保 徹 (著)

まごめじゅん

私の本棚でひときわ存在感のある一冊をご紹介します。

なにかあると手に取って、その症例を調べる。
辞書的な使い方をしている本です。

   

面白いなと思ったのは「免疫の先祖返り」という表現。

肉体的、精神的ストレスを感じて、命の危機にさらされると、人間は身体のシステムが先祖返りをする。

免疫で言えば、胸腺や骨髄のT細胞やB細胞が弱体化して、より原始的な免疫システム(自然免疫)のマクロファージやB1細胞が防御力を増す。

マクロファージは動脈硬化に関与するし、B1細胞はリウマチなどで自己抗体を作るといった具合です。

  

人間というシステムは進化の過程で複雑化してきました。

ストレス状態、パニック状態になると、生存のために、複雑化した部分から切り捨てていく。

それはまるでパソコンのセーフモードのような状態。

つまり、病気は身体のシステムの「先祖返り」

  

理論はどうあれ、この考え方には経験からくる納得感があります。

例えば、人間はトラウマな出来事がフラッシュバックするとき、身体がフリーズします。

あれは原始的な背側迷走神経反射で、無脊椎動物の貝が恐怖で貝殻を固く閉じた状態と同じ。

命の危機的状況では、より後発で発達した腹側迷走神経よりも、原始的な反応がより強くなるというわけ。

がん細胞も、一種の先祖返りした細胞だと言えます。

だって太古の昔は嫌気性代謝だったわけだしね。

  

全体を通して読むもよし。辞書的な使い方をするもよし。

全体の文調が、おじいちゃん教授の含蓄ある語り部といった感じで(ごめんなさい)、なんだか読んでて落ち着くのでついつい開いてしまいます。

アマゾンの高評価も納得の良く出来た一冊です。

    

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