「セレン」というミネラルについて・まとめ
マイナーではあるものの、
わりに重要なミネラル
「セレン」
セレニウムとも言います。
セレンについてポイントを絞って
まとめてみました。
セレンと抗酸化
セレンと言えば、脂質の酸化抑制に
寄与するミネラルです。
グルタチオンペルオキシターゼ
という抗酸化酵素の補因子がセレンです。
グルタチオンペルオキシターゼは
活性酸素である過酸化水素を還元して
二酸化炭素と水に変える酵素です。
グルタチオンペルオキシターゼの活性は
セレン濃度に依存します。
脂質の酸化を抑制するという意味では
ビタミンEの作用と共通点が多い。
ビタミンEとセレン、ともに
脂質の酸化を抑制するために働くので、
セットで語られることが多いです。
セレンと乳がん
セレンは乳がんとの関連文献が多いです。
「乳がんの患者はセレンの摂取量が少なかった」
Relationship Between Selenium and Breast Cancer: A Case-Control Study in the Klang Valley
「乳がん患者の血清セレン濃度は低い」
Selenium in serum and neoplastic tissue in breast cancer: correlation with CEA
セレンと甲状腺
セレンは甲状腺ホルモンの活性化に重要。
甲状腺ホルモンT4を
活性型のT3に変換する酵素
脱ヨウ素酵素の補因子です。
セレン不足は甲状腺機能低下への
影響が懸念されます。
セレンと解毒
セレンは、生体内で有害ミネラルである
ヒ素、カドミウム、水銀と拮抗します。
セレンが体内に存在することで
毒性のあるミネラルの影響が軽減
されているということ。
例えば、マグロなど大型魚は有毒な
メチル水銀をわりと多く含有しますが、
その割に弊害が少ないのは、マグロに
セレンが含まれているからと言われています。
水銀は、甲状腺ホルモン分泌に重要な
TSHと、Ft3からFt4への変換の
2か所をブロックします。
ということは、セレン不足だと
水銀の影響も受けるし、
Ft3への変換障害も出るし、
二重の意味で甲状腺ホルモンに
悪い影響があることになりますね。
異常気象の影響で世界的にセレン不足の予想
こちらのPNASの論文によると、
今後は異常気象の影響で、世界的に
セレン不足が進むと予想してます。
Selenium deficiency risk predicted to increase under future climate change
土壌中のセレンの濃度は降水量と
PHに拠るそうで、耕作地の66%において
約8.7%のセレン減少になると予想。
赤い地域ほどセレンが低下(予測)
セレンは魚介類や肉類に多く含まれます。
野菜のセレン含有量は
その野菜の育った土壌で決まります。
土壌のセレン含有量は結構重要なのです。
以上、存在感の薄いミネラルではあるものの、
生体内ではかなり重要ポジションの
セレンについてまとめてみました。
それにしても、細胞内の
抗酸化を行う主役級の役者を、
なぜセレンのような地味な
ミネラルに依存させたのか?
生物の仕組みって不思議ですねぇ。
今日のまとめ
- セレンは脂質の抗酸化に寄与する
- セレンは甲状腺ホルモンの活性化に必要
- セレンは有害ミネラル(水銀)の毒性を低下させる
- セレン不足は乳がんと関係があるかも