数値単体では判断するのは危険【栄養療法・良いドクターの選び方】

数値単体で判断できるほど甘くはない

知人から質問が来ました。

『血液検査の結果でいつも総コレステロールが230付近でチェックが入ったりするのですが、HDLがいつも90ぐらいでLDLも100~120なんです。

この結果ってどう解釈すればいいんですか?

善玉が多いからいいんじゃないかと思うけど、総コレステロールはいつもチェックが入ってます。』

 

依頼者の質問の場合、HDLが90程度でLDLが100~120というのは分子栄養学的には完璧ともいえる理想値です。

(コレステロール値の判断に関してはこちら★を参照してください)

さて、この質問に対しての答えですが

 

A「これは良いコレステロールの値ですね!素晴らしい!」

B「分かりません!」

 

A、B、どちらの回答をするカウンセラーが良いカウンセラーでしょうか?

 

答えは「B」です。

(この情報だけで「健康値です!素晴らしいですね」と答えるカウンセラー・ドクターがいたとしたら、その技量を疑ったほうが良いと思います。)

 

 

この方、他のデータの開示がありません。

もしも、他のデータが

TP 6.9, Alb4.8, AST/ALT 18/9, BUN9.0

だとしたらどうでしょう?

 

はい、解釈は真逆になります。

低たんぱくがあるのに、コレステロールが不健全に良い数値すぎます。

このデータは「良くないデータ」です。

 

血中にLDLコレステロールがあふれる原因を考えなければいけません。

エストロゲン代謝か、肝機能か、場合によっては甲状腺ホルモンの検査をおすすめするでしょう。

 

分子栄養学的なデータの判断は、数値単体を診ては失敗します。

検査項目、データの持つ意味合いを理解していれば当然のことです。

 

例えば、LDL、HDLは「Lipoprotein」、つまりタンパク質に抱えられた脂質です。

ですので「低たんぱくの状態」と「コレステロール値が健康値」というのは共存するわけがないのです。

 

あくまで全体を俯瞰したうえでの総合判断であり、データの数値に対する違和感の正体を探す

これが出来なければ、分子栄養学的なデータの深読みは意味がないどころか、治療方針を間違うことになるでしょう。

数値以上に大切な問診・視診・触診

対面カウンセリングなら、もっと手に取るように分かるでしょう。

 

もし相談者が声の張りがあり喉のかすれもない、顔色はよく肌の艶もある、

食事内容を問診すると、ちゃんとたんぱく質を食べており、

手を握ったら手汗もなく、ほんのりと包み込むように温かい場合。

これは’健康なコレステロール’の状態であり「良いデータです、素晴らしいです」と回答できます。

 

声にかすれがなく張りがあるのは、ビタミンAをはじめとする脂溶性ビタミンがうまく回っているということです。

脂溶性ビタミンがうまく使えているということは、胆汁がちゃんと出てているということ、

つまりコレステロールがうまく回せていることの証明。

 

肌の色艶が良いのは細胞膜がしっかりしているということ、

細胞膜の原料はLDLコレステロールですから、これもコレステロール代謝が健全なことを意味しています。

 

手汗がなく、包み込むような温かさがあるということは、自律神経のバランスが良いということ。

糖代謝が上手でエネルギーが健全に回ってますので、肝機能も腸粘膜もちゃんとしていることが推測されます。

肝機能が健全であれば、代謝されない野良コレステロールが血中にあふれていないということです。

 

要するに視診と触診で得られる情報はデータと同じくらい重要な判断材料となるわけです。

データの数値だけを診て、食事内容や便通、体格や肌の感じをスルーするのはあり得ません。

単体のデータだけで判断するのは危険

SNS上で、ある方が質問しているのを目にしました。

「フェリチンが30でした、まだ鉄サプリが足らないのでしょうか?」

それに対する答えが、

「はい、鉄を増量してください」

でした。

 

たまらない残念感とともに画面を閉じました。

こちらで書いたとおり(↓)鉄は諸刃の剣ですよ。

【貧血・低フェリチン】栄養療法における鉄サプリメントの注意点 | ビタミンアカデミー
鉄サプリメントについて 「Hgbが一桁なの」とか、「フェリチンが1でした」とか、 ここのところなぜか貧血に関する話題が私の身の回りでシンクロしています。 ここ一年くらい、当サイトで鉄についてはあまり書いてきませんでした。 なぜ鉄についてあまり書かなかったかというと、亜鉛やマグネシウムなど、その他のミネラル・サプリメントに比べ、鉄は扱いが難しいと感じるからです。 鉄はコアな栄養素となるミネラルですが

 

きっとこの方はSNS以外でも実際に繋がりがあって、ご本人をよくご存じで、

その方の食事も体質もデータも熟知したうえで「鉄サプリを増量してください」と言ったのでしょう。

(てか、そう信じたい)

 

分子栄養学的なデータの読み方が世間に広まるのは大変すばらしいことです。

インターネットでデータの読み方が広まるのは滅茶苦茶ウェルカム。

だから私も日々こうして当サイトを更新しております。

 

でも「正しく」広まってほしい。これが本望。

分子栄養学的なデータの読み方は一般的な健康診断の判断とは全く違います。

一般的な健康診断では、数値単体でエラーを検出しますが、

分子栄養学では、あらゆるデータが数値単体で判断なんて絶対出来ません。

 

単体の健康診断のある数値だけをポンと送ってカウンセラーやドクターに気軽に意見を聞かないようにしましょう。

「こいつのデータ解析力はどの程度か」という試金石として聞くならアリでしょうけどね。

「これだけじゃあ分からん!」と怒らないドクター・カウンセラーはアウトですよ。

どっちにしても、ちゃんとしたプロに意見を聞くわけですから正規ルートで依頼してくださいますようお願いします。

 

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