毛髪水銀濃度が高いと認知機能の発達が遅れる
スペインのグラナダで行われたコホート研究(大規模な人数を長期的に調査した研究)の結果です(2010年1月)
4歳児以下の小児72人が調査対象で、魚を食べる量、毛髪中のメチル水銀量、認知の発達程度の調査を行った。
毛髪中のメチル水銀レベルが 1.0μg/g以上になると、一般的な認知発達度が 6.6ポイント低下、記憶力が 8.4ポイント低下、言語力が 7.5ポイント低下という結果です。
ちなみに毛髪中メチル水銀の平均レベルは 0.96μg/gだったということで、一部の高汚染地域ではなく、水銀濃度が平均以上になると全体的に能力が低下する傾向があったとのこと。
毛髪水銀濃度の高い子供は、魚を食べる頻度が多かったため、体内の水銀は沿岸の魚由来であろうと推測しています。
栄養療法でも、体内の水銀汚染は重要視します。
この調査では、毛髪ミネラル検査で検出された量が多いほど汚染度が高いとしてますが、実際には毛髪ミネラル検査で検出されないケースも多いです。
例えば、自閉症の毛髪ミネラル検査では、水銀レベルが低いほど、症状が重度であったというデータがあります。
これは、水銀の排泄能力が低下しているため、水銀の害を受けやすいことを意味しています。
ミネラル輸送障害がある場合、毛髪検査では有害ミネラルがあまり出ないことが多く、その場合は重金属のデトックスが下手な体質ということです。
カンジダ菌のような腸内細菌が水銀を抱え込んでいる場合、体内の水銀汚染は高いのに、毛髪検査では出ないというケースもあります。
毛髪ミネラル検査は、検査結果の読み方にテクニックが必要です。
血中の水銀濃度が高いと炎症レベルが上がる
ニューヨーク州オスウェゴ在住の 9〜11歳の児童100人を調査したところ、血中の水銀濃度が高いほど、コルチゾール濃度も高く、炎症マーカとなるタンパク質が高かったそうです。
Fish Consumption, Low-Level Mercury, Lipids, and Inflammatory Markers in Children
水銀濃度が高いほど、魚を食べる回数が多いので、水銀は食事由来と推定しています。
しかし、水銀濃度が高い児童ほど、オメガ3などの脂質の状態がよかったとのこと。
魚を食べることにより、血管の柔軟性、脂質の状態は向上するけれど、水銀汚染は免れないことが分かります。
オメガ3のサプリメントは、廉価なものは酸化が進んでいることを以前書きました。
水銀汚染の点でも安価なものには注意が必要ですね。
EPA・DHA・魚油サプリメントは酸化が進んでいるので要注意! | ビタミンアカデミー
今回の論文2つは子供の水銀汚染に関する調査結果でした。特に気になる症状がなければ過剰な心配は不要かと思いますが、もし気になる場合は専門医にご相談ください。
栄養療法の医師には、発達障害や自閉症などの治療・ケアを得意とするドクターがいらっしゃいます。
症状の原因に重金属中毒の疑いがある場合、キレーション、デトックス治療を行います。
これは栄養療法の中でもレベルの高い治療です。
専門医の指導の元で行うことがおすすめです。
魚由来の水銀汚染を避ける方法
我々の体には、もともとデトックスする力が備わっています。
普段から、腸内環境を良好に保ち、便秘をしないこと、そしてキャベツや玉ねぎなどキレーション効果のある野菜をたくさん食べるようにすることが大切です。
特に、最近流行のパクチーは、重金属のデトックス効果が高いことが知られています。
また、水銀汚染は、食物連鎖により大型魚でリスクが高まります。
マグロ、メカジキ、ぶり、などの大型魚は食べる回数を減らすこと。
アジ、イワシ、しらす、などの小型魚であれば、食べる頻度が多くても特に問題ありません。
また、シャケ(天然)は生育期間が短いので、水銀汚染がさほど深刻でない魚です。
デトックス能力が高い人は問題ないのですが、問題ありの方はできるだけ小型魚を選ぶようにしてください。