損傷や老化による筋肉の減少はグルタミンが回復させている
筋肉におけるグルタミンの役割は重要です。
筋肉の損傷や老化による萎縮は、グルタミンがリカバリーしているとのこと。
つい先日、Natureに出たばかりの論文より。
筋肉の損傷、虚血、および加齢に伴う筋肉の消耗がグルタミンの減少を特徴とする状態であることを特定した。筋肉に到着したマクロファージが、筋幹細胞にグルタミンの元のレベルを再確立させることで、筋肉繊維の再生を促している。
Macrophage-derived glutamine boosts satellite cells and muscle regeneration., Nature (2020)
グルタミンは筋肉中に最も多く含まれるアミノ酸です。(筋肉中のアミノ酸の6割がグルタミン)
そもそも、なんでそんなに多く筋肉に存在するのか?詳しく分かって無かったのですが、このたびその一部が解明された模様。メカニズムとしてはこんな感じ。
- 筋肉の損傷、老化による筋肉の低下
- マクロファージが集まってくる
- マクロファージによるグルタミンの産生にスイッチが入る
- マクロファージが産生したグルタミンを筋サテライト細胞(筋肉の赤ちゃん)に渡す
- 損傷した筋肉組織が迅速に再生される
グルタミンは非必須アミノ酸です。身体の中で合成することができます。
「必須アミノ酸が大事」という表現を、「非必須アミノ酸は大事じゃない」と受け取らないでくださいね。
身体にとってグルタミンが非必須アミノ酸である理由は、いざというとき無いと困る、生命の存続に常時必要だから、食べ物から摂取という不確定要素にしなかったという考え方のほうが私はしっくりきます。
「筋肉がつかない」という悩みの背景
運動して筋肉痛になっても、なかなか筋肉がつかない人がいます。
筋肉中のグルタミンが、糖新生側(エネルギー)に回ってしまうせいでしょう。
グルタミンはグルタミン酸になって、糖新生に回ります。
タンパク質がエネルギーになるとき、アミノ基はグルタミン酸とアスパラギン酸に集められます。
ミトコンドリアの膜を通過できるのが、グルタミン酸とアスパラギン酸だからです。
分子栄養学の中級者以上は、私のセミナーでよく使われるこのスライドを要チェックしといてください。
あと、グルタミンは腸の細胞のエネルギー源です。
腸管に問題があって、がっぽりグルタミンを持っていかれてたら、筋肉再生まで回らないでしょうね。
そしてね、グルタミンは免疫細胞の需要が大きいのです。
知り合いのドクターが、「風邪をひくと免疫と抗体にグルタミンを奪われるので、身体の節々(筋肉)が痛くなるのではないか?」という仮説を立ててましたが、私もたぶんソレだと思う。
IgA抗体とグルタミンは関係が深い。
グルタミンが筋肉の損傷をリカバリーしているという件は、以前から「たぶんそうだろうね」と知られておりました。
で、実際に「本当にそうでしたよ」という、新鮮味には欠けるものの、グルタミンの重要性について認識を新たにした次第です。
今日のポイント
・筋肉の損傷をリカバリーするアミノ酸はグルタミンがキー