【栄養療法】健康診断Aなのに体調不良の理由

健康診断Aなのに体調不良の理由

 

40代女性のデータです。
ご本人の掲載承諾がありましたので、ご紹介いたします。

主訴は、

・家の中が片付かない、頭の中も片付かない(論理的思考が苦手)
・慢性的な蕁麻疹、疲労感

です。

パッと見て典型的なたんぱく質不足であることがわかります。

 

まず、特徴的なのが、低すぎるAST/ALTです。
AST13、ALTは9です。

数値が高くないので異常値にはなりません。従って健康診断の結果はAです。

 

 

もともと、AST/ALTは、心臓や肝臓の細胞に含まれる酵素を表しています。

炎症などで細胞が壊れると、酵素が細胞から血液中へ漏れ出します。
なので、AST/ALTのことを別名「逸脱酵素」と言います。

細胞は代謝するときにも細胞膜が壊れます。
低すぎる数値は細胞の代謝が低下しているか、酵素不足で不活性であることを示唆しています。

なぜ細胞代謝が低下しているのか、酵素不活性なのか、この場合、主に以下2つの状況を推測します。

・細胞、酵素の原料となるたんぱく質が不足している場合
・酵素を活性化する補酵素となる栄養が不足している場合(特にビタミンB不足)

AST/ALTから推測する脳内ホルモンの状態

たんぱく質とビタミンBが不足することで、脳内の細胞では何が起こっているのでしょうか?

脳内ホルモンの原料はたんぱく質です。

例えば、セロトニン、メラトニンの原料はトリプトファン、GABAの原料はグルタミン、ドーパミンの原料はチロシンです。

原料のたんぱく質から脳内ホルモンが代謝される際にビタミンBが補酵素として使われます。
脳内ホルモンの代謝に、特に重要になるのはビタミンB6です。

トリプトファン →(ビタミンB6)→ セロトニン、メラトニン
チロシン →(ビタミンB6)→ ドーパミン、ノルアドレナリン
グルタミン →(ビタミンB6)→ GABA

 

たんぱく質不足で脳内ホルモンの原料自体が足らず、ビタミンB不足で脳内ホルモンの代謝がうまく行われていません。

脳内ホルモン自体が不足、もしくはアンバランス状態にあるため、幸せ感が薄く、集中力、意欲が低下、気分の動揺が起きやすくなります。

「深く考えがちだが、思考がまとまらない」という主訴と一致します。

たんぱく質不足、ビタミンB不足は皮膚の状態にも出やすいので、皮膚疾患を抱えやすくなります。

細胞自体がパワー不足なので、交感神経だけで自分を奮い立たせています。抗体が作られやすくなるので、蕁麻疹やアレルギーが出やすくなります。

 

食事内容を伺うと、パンが好き、コーヒーは毎日、夕食の準備のため小腹が空いたらチョコレートクッキーをつまむ、などなど子育てに忙しいお母さん世代にありがちな食生活でした。

ご本人も健康診断の結果はいつもAなので、疲労感、頭の中のモヤモヤの原因が栄養状態にあるとは思わなかったそうです。

セラピーやカウンセリングを長く受けていたようですが、この栄養状態だとカウンセリングから卒業できる日が来るのかどうか?ちょっと疑問です。

 

幸せに生きるとは、至極シンプルなことだと思います。

美味しくご飯を食べて、すっきりウンチョス出して、楽しく笑って、気持ちよくセックスして、ぐっすり寝る。

このシンプルさに陰りが出たとき、心の問題として追求することも必要ですが、同時に栄養面から身体と脳を満たしてあげることも忘れないで欲しいと思う次第です。

 

他にも、

・低すぎるTG、おそらく交感神経優位でストレスが強い、コーヒー好き
・いやに高めのHgbA1C、おそらく炭水化物多めの食事、血統障害ありそう。
・たんぱく質不足による低コレステロール、胆汁不足で消化が下手、お肉が食べられない
・Hgb、RBCはおそらくたんぱく質不足による濃縮あり、夏バテしやすく、体力がない

と、いろいろ推測可能な点が多いのですが、全部について書くのは無理なので、AST/ALTのみで書いてみました。

 

今回は、主訴、血液検査の結果、普段の食事内容、本人の見た目(痩身で低体温、胸鎖乳突筋の張り)、全てが一致するので、わかりやすいケースでした。

実際はマスキングされるケースが多く一筋縄ではいきません。

例えば、お酒を飲む方や運動する方は逸脱酵素が増えるべきですが、たんぱく質不足、ビタミンB不足による酵素不活性だと、数値を押し上げる要因と押し下げる要因が混在します。

食事内容やライフスタイルなど、詳細な問診と視診ありきの判断です。
決して数値だけで判断するのが栄養療法ではないのでご注意ください。

 

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