有田先生の脂質セミナー
先週の土曜日、慶応大薬学部の有田先生の脂質に関するセミナーに参加しました。
ここ最近参加したセミナーの中では、たぶん一番良い、
いろいろな意味で頭一つ抜きんでたセミナーでした。
私は糖質、タンパク質のセミナーは開催していますが、脂質セミナーはまだ未完です。
栄養の中でも脂質が一番むずいと感じるからです。
脂質が難しいと感じる理由の一つは、短期的な結果を出しにくい点にあります。
糖質、タンパク質は食生活を変えれば結果が出やすく、血液検査のデータにもよく反映されます。
自分の中でも経験値が豊富です。
ところが脂質は知識ばかりで経験値が少ない。
脂質改善は長期戦です。身体の実感も少ない。
お魚をよく食べるようにしたら、3か月後にアレルギーが治ったとかあまり聞きませんよね。
抗炎症に脂質は大事なファクターなのですが、どこまで真剣に取り組めばよいのか、
何が良くて何がダメなのか、ラインのひき方がいまいち分からなかったのです。
今回のセミナーで知識の点と線がつながり、モヤっとしていた部分がクリアになりました。
オメガ3系脂肪酸が身体によいと言われるようになった歴史的な背景も知ることが出来て、現時点でどこまでわかっていて、何が分かっていないのか、
我々門外漢にも分かりやすく言葉を選んでお話頂いた点も良かった。
お話のスピードや、聞く側のレベル感を考えた言葉の選び方、資料の作り方など、セミナーをする側の人間としてもたいへん勉強になりました。
セミナーの中から、みなさまにも分かる内容を少しお裾分け。
血清中のEPA(エイコサペンタエン酸)と、AA(Arachidonic acid、アラキドン酸)の濃度比率の値が小さくなるほど、5年後の心疾患による死亡率は上昇します。
この傾向は、炎症マーカである高感度CRPが1以上で顕著になります。
EPAは、ご存じ抗炎症に働くオメガ3です。
AA(アラキドン酸)はその逆、ざっくり言えば炎症系の脂質です。
EPA/AAの比率が小さいということは、血液中の抗炎症系の脂質が少なく、炎症系が高いということ。
これは日本でもたいへんクオリティの高いコホート研究と言われている久山町研究の結果です。
ところ変わって都市部のごく平均的な日本人を調べると、若い世代ほどEPA/AA比率が悪い。
これは2010年の発表なので、現在の40歳前後から下の世代となります。
明らかに若い世代で食生活に変化が起こっていることを示しています。
「日本人はお魚を食べるから欧米と比較して心臓病が少ない」説、これ今後はオワコンかもしれません。
じゃあどうすればよいのか?
これを考えみなさまにお伝えするのが自分の仕事だと思っています。
脂質セミナー、近い未来ちょっとやってみようと思います。