鉄サプリが効かない
「鉄サプリを飲んでいるけど調子が悪いです」
よくあるタイプの問い合わせです。
1ヵ月に1人くらい出くわします。「ああ、またこれか」と言う感じ。
こちら↓でも書きましたが、鉄は細菌の栄養にもなります。
鉄をコントロールするホルモン「ヘプシジン」
人間の身体には、細菌やウィルスに鉄を横取りされないよう、鉄を厳密にコントロールするメカニズムが備わっています。
細胞膜にはフォロポーチンという鉄のための玄関があります。
ところが、細菌感染などにより炎症が起こるとヘプシジンというホルモンが働いて、この玄関をぶっ壊します。
悪い奴ら(細菌など)に栄養(鉄)を与えないようする身体に備わった防御システム、それがヘプシジンというホルモンのお仕事なんですな。
ヘプシジンが出動すると、小腸粘膜の細胞では鉄が吸収されず、脾臓ではリサイクルされた鉄がマクロファージに入れなくなる。
従って、体内に利用できる鉄が少なくなる。
「細菌から防御しようとする身体のメカニズムが、鉄欠乏の症状を誘導する」という仕組み。
ガン患者は多くが貧血です。
「ガンになるのは、鉄欠乏によりミトコンドリア機能が低下、細胞アポトーシスに不具合が生じた結果である」という側面もありますが、
実際のところは「悪性腫瘍による炎症反応によりヘプシジンが誘導され鉄利用サイクルが低下し貧血になる」という理由もあります。
卵が先か鶏が先かというハナシではありますが、炎症がある場合は鉄欠乏が誘導されるように身体の仕組みが出来ているわけです。
最初は調子よくなるという鉄サプリの謎
「鉄サプリを飲んでいるけど疲れやすいんです」という方みなさんに共通するのは、鉄サプリを飲み始めた当初は非常に調子がよくなったという点です。
このメカニズムがイマイチ分かりません。
おそらく、、、なんですが、
過剰な鉄により活性酸素が発生、自覚のない慢性炎症により交感神経優位の状態が誘導され、一時的に元気になったように感じられるのかな?と考えています。
そして長期的(2~3か月)と続けることによって副腎機能が低下、抗ストレス力が弱くなり易疲労へつながるのかなと。
もしくは、長年の鉄欠乏が鉄サプリを始めたことによって瞬時に解決され、いったんは鉄欠乏が治る。急にミトコンドリア機能が刺激され、ものすごく元気になったような気分になる。
しかし、長期的に続けることにより、鉄飽和シグナルによってヘプシジンが出動、「飲んでも飲んでも鉄欠乏」という鉄サプリメント地獄に陥る。
鉄が活性酸素発生源となり、慢性炎症からコルチゾールの無駄使い、そして副腎疲労という流れではないかと。
ヘプシジン誘導は ①炎症性サイトカイン ②鉄飽和シグナル によって行われます。
参考文献 「Ironing out Ferroportin(October,2015)」
「鉄過剰にはならない」という意見も聞きましたが、実体験からするとちょっと違うよなぁと感じてます。
実際に、鉄サプリを飲み始めたらヘモグロビンが低下した、という方もいらっしゃいます。
鉄サプリを続けているのに体調がイマイチと言う方ですが、
機能性低血糖の症状と思われる症状を併発している方が多いのも特徴です。
中にはかなり律儀に糖質制限、糖質のコントロールをしているのにも関わらず、午後の倦怠感や眠気を訴える方もいらっしゃいます。
腸管も副腎機能も低下しているとしか思えない。
かく言う私自身も、鉄サプリでは「やらかした」経験があります。
みなさんと同じように鉄欠乏を表すデータでしたから、鉄サプリを毎日50~60㎎飲んでおりました。
結果、SIBOの症状が悪化し常時腹部膨満感がひどくなる、
歯根感染から歯根嚢胞が悪化。
通っている歯医者に「なんで1年でこんなに大きくなるのかなぁ」と小首をかしげられましたというエピソード持ちです。
恥ずかしくて闇に葬ってましたが、鉄サプリ失敗組には「大丈夫、あんただけじゃないから」とお話できるネタとして役に立ってますけどね。
なぜサプリメントが効くのか?その理由が大事
「初めての分子栄養学」セミナーでは必ず最後に強調していることなんですが、「サプリメントが効く」という場合は「なぜ効くのか?」というところに、あなたの身体の問題点が潜んでいるわけです。
その栄養素が欠乏する真の原因、そこを見ようとしないでサプリメントで症状をごまかすことは、長期的にみれば良いことはないと思います。
鉄の例でいえば「なぜ鉄欠乏になったのか?」という視点が必要です。
鉄サプリで症状が改善したら「なぜ鉄欠乏がおきたのか?」にアプローチする。
原因がわかったら、そこをつぶす。
そしてサプリメントに頼らなくても鉄を賄える身体を作っていくことにシフトするのが大事なんじゃないでしょうか。
本来、人間は食事だけで栄養を賄えるはずですし、突出した栄養素の長期的な摂取が身体のホメオスタシスになんらかの影響を与えることもあるかもしれません。
最終的にはサプリメントを使わなくても健康な身体を目指すための分子栄養学でありたいと思います。