ワイン3杯の飲酒でも腸からバクテリアが漏れる「リーキーガット現象」を確認
飲酒がリーキーガットの原因になるという論文みつけたのでメモ。
Acute Binge Drinking Increases Serum Endotoxin and Bacterial DNA Levels in Healthy Individuals
21歳から56歳の、健康な(アルコールに関する疾病履歴のない)男性11名(飲酒習慣は週に12杯以下)、女性(飲酒は週に9杯以下)、合計14名を集めて実験を行ったというもの。
アルコール度40%のウォッカを、体重1kgあたり2mlの量をジュースで割って飲んでもらい、その後の血清アルコール濃度と、エンドトキシン(毒素)、炎症物質サイトカインの変化を計測したとのこと。
アルコールの量ですが、体重が60kgだとすると、ウォッカ120ml、これは、
・ワインであれば、グラス3杯(320ml)
・ビールであれば、缶ビール3本(960ml)
のアルコール量に相当します。
結果は、
■血清アルコールは飲酒後1時間で最大、その後24時間かけてゆっくり低下した
■LPS(グラム陰性菌)が、飲酒後30分で最大となり24時間かけて低下した
■エンドトキシン(毒素)は30分後に最大となり24時間かけて低下した
■炎症性サイトカイン(TNFα、IL-6、MCP1)は、飲酒後大きく増加した。
■アルコールを飲まない群は、この反応を示さなかった。
結論です、
■アルコールにより腸のバリア機能が侵され、腸内バクテリアが血中に移行、炎症性物質が発生する
■女性は男性より、アルコールの影響が強く出る。LPS・エンドトキシン濃度も高く、回復も遅い
同じアルコール量でも女性の方が弱いとのこと。
これまでも、アルコールによる腸内細菌・腸管への影響を研究したものは色々あるのですが、対象がアルコール中毒患者など、あまり参考にならないものがほとんどでした。
「アルコール中毒患者は、腸内のバクテリアが腸管から漏れて、毒素として脳や思考に影響を与えている」
Alcohol, Intestinal Bacterial Growth, Intestinal Permeability to Endotoxin, and Medical Consequences
一般的なアルコール量でも、リーキーガットによる血清中エンドトキシン毒素が上がる、という結果が出たのは、菌検査の精度が上がってきたせいでしょうか。
適度な飲酒でもリーキーガット現象は起こる
リーキーガットの症状がバリバリに出てる体調不良ではなく、健康体と自認する人が対象ですから、ごく普通の人でもリーキーガット現象が起こるということになります。
もちろん免疫が健全であれば、炎症は24時間後に収束しますが、身体には負担をかけています。
肝臓が分解するのはアルコールだけではなく、腸から漏れた毒素も解毒しているわけですから、毎日飲めばデトックス能力は落ちます。ま当然ですね。
ここではアルコールが、どういった機序で腸管バリアを壊すのかは結論付けられていません。
しかしながら、マウスにおける実験では、アルコールにより、腸の細胞間タイトジャンクションの形成に関わるタンパク質「オクルディン」の減少と、リーキーガットを引き起こすタンパク質の「ゾヌリン」の出現が認められたとのこと。
ということで、アルコールはリーキーガットの原因として限りなくクロ。
飲酒した翌日にアレルギー症状が酷くなったり、まあ色々と思い当たる節があります。
お酒は滅多に飲まなくなったのであまりショックではありませんが、割と少量でも影響出ちゃうようなので今後も注意します。
ちなみに、論文のダイジェスト版はこちら。こちらのほうが英語が簡単で読みやすいです。
BINGE DRINKING CAUSES LEAKY GUT, RAISING LEVELS OF BACTERIA AND ENDOTOXIN IN THE BLOOD