『心はなぜ腰痛を選ぶのか』ジョン E.サーノ (著)
すごい本でした。
衝撃的。だけどものすごい納得感。
人によっては(文字通り)痛いところを突かれますので、不快感を持つかもしれません。
著者のサーノ博士は、ニューヨーク医科大学臨床リハビリテーション医学科教授。
患者の痛みを診る経験を通して、従来の診断と治療に矛盾を感じるようになる。
なぜか?
理由は主に以下3つ
- 痛みを持つ患者を検査すると、椎間板の潰れなど、器質的・構造的異常が見つかるが、それは誰でも(痛みのない患者にも)見られるものである。
- 腰痛を感じている患者に触診すると、上部僧帽筋、腰部傍脊柱筋、両臀部外側にも圧痛点がある。それらは中枢神経に端を発している(つまり脳が痛みの命令を出している)
- 無意識下の抑圧された感情を顕在させると、患者の痛みは消える。
博士曰く、あらゆる”痛み”は無意識下に隠された感情から意識を逸らそうとする脳の防御反応とのこと。
精神症状であれ身体症状であれ、その症状の目的は、心から身体へと注意をそらすことによって、抑圧された感情が意識上浮上するのを妨げようとすることである
第一章 心身症の心理、感情的な心の構造(P18)
でも、なぜ隠された感情から、意識を逸らそうとするのか?
なぜなら、無意識下の隠された憤怒は、あまりに幼稚で粗野で威嚇的で恐ろしいものなので、脳は反射的に身体に症状を起こし、危険な感情が顕在化しないよう避けようとしているのだと。
無意識下の隠された憤怒が、耐えがたい量、大きさになると、人間の脳は”痛み”を出して、その憤怒を抑え込もうとする。
もし、生活に楽しみがあれば、憤怒の脅しは緩和され、症状は無用になるとも。
患者の痛みが生じている部分には、細胞レベルで微小な酸欠状態が起きているらしい。
痛みのメカニズム 無意識下に抑圧された感情(憤怒) ⇒自律神経の異常な活性化 ⇒局部的な血流不足(虚血) ⇒極度の酸素欠乏 ⇒神経痛、しびれ、腱痛、腰痛、線維筋痛症、発作、麻痺など
博士によると、無意識下の感情が生み出されれるのは大脳辺縁系。
大脳辺縁系が、身体症状を要求する。
しかしながら、脳が、どの部位にどのような症状を出せと命令するかは、現代の医学ではまだブラックボックスで解明されていないとのこと。
ここで思いだすのが、東洋医学でいう感情と臓器の関係だ。
肝臓は怒り、胆のうはプライド、肺は悲しみ、etc.
心理的な要因が、症状とリンクすることは、わたしたちは経験を通して知っている。
全編を通して、心が異様にザワつく一冊だった。
なんでだろう。
たぶん、日々の経験を通して、なんとなく感じていたふわふわしたものが、鋭くスパッと言い切られたせいだ。
タイトルは「腰痛」とあるが、腰痛だけではない。
消化器系疾患、循環器系疾患、皮膚疾患、泌尿器科系、あらゆる病態は、TMSの等価疾患だと診断可能らしい。
なぜなら博士の治療プログラムで治ってしまうから。
自分の”痛み”が、どんな無意識下の感情を抑え込もうとしているのか?
少しでも興味がある方は一読をお勧めします。