「亜鉛は抗生物質と一緒に飲むべからず」の真実
抗生物質は、亜鉛をキレートすることで知られています。
亜鉛をキレートするということは、どういうことが起こるかというと、
・抗生物質の腸管での吸収が悪くなり、抗生物質の効き目が低下する
ということです。
亜鉛をキレートすると言われているのは、主にニューキノロン系の抗生物質です。
・シプロフロキサシン 商品名「シプロキサン」「シプロ」
・レボフロキサシン 商品名「クラビット」「レボフロキサシン」
・オフロキサシン 商品名「タリビッド」
強力で多様な菌によく効くので割とポピュラーな抗生物質です。
亜鉛サプリメントと一緒に摂ることで、抗生物質の効き目が悪くなるのなら、注意事項として記載があるはずですが、実際は注意事項として言われることはあまりありません。
なぜかというと、消化管の環境下ではあまり気にするレベルではないためです。
亜鉛といえば、ここでも書きました胃潰瘍のお薬ポラプレジンクが日本では有名です。
ポラプレジンクを使って動物実験したところ、あまり影響しなかったという結果になったそう(1996)
抗菌剤の消化管吸収に及ぼす新規抗潰瘍剤Polaprezincの影響
抜粋すると「亜鉛は、アルミニウム、鉄、銅に比べて安定なキレートを形成しにくく、ニューキノロンやテトラサイクリンとのキレートも不安定であるため吸収抑制の程度も軽微である」
要するに、試験管の中と消化管の中では環境が違うので、気にするほどキレート効果は影響が少なかったとのこと。
たぶん、絶食下では多少は影響するかもしれませんが、食後なら問題なさそうです。
もし気になるようであれば、抗生物質を飲むタイミングと、亜鉛を飲むタイミングを数時間ずらせば大丈夫です。
キレート効果は少ないとはいえ、抗生物質を長期利用すると、味覚異常など亜鉛不足の症状が出てくることが知られています。亜鉛サプリメントで補充するメリットはあります。
逆に、亜鉛が抗生物質の効きを良くしたというリサーチ結果もあるくらいですので。
Effect of magnesium and zinc on antimicrobial activities of some antibiotics.
亜鉛がクロストリジウム感染のリスクを上昇させる
抗生物質による亜鉛のキレート作用、あまり気にする必要がないよー、という結論になったところに、問題はそこじゃなく別のところにありそうとなったのが、最近Natureに発表されたこちらの論文。
「高亜鉛は腸内細菌叢を変化させ、 クロストリジウム・ディフィシルに感染に対する抵抗性を低下させる」(2016)
Dietary zinc alters the microbiota and decreases resistance to Clostridium difficile infection
餌に亜鉛を多めにしたマウスと、そうでないマウスでは、亜鉛の多いマウスが圧倒的にクロストリジウム感染率が高かったとのこと。
クロストリジウム自体は健常者にもいる細菌ですが、抗生物質を使用すると、腸内細菌のバランスが崩れ、大腸炎を起こし、膨満感や下痢を引き起こすことがあります。いわゆる「クロストリジウム・ディフィシル腸炎」という状態です。
同じ量の抗生物質を投与しても高亜鉛の餌マウスは、クロストリジウム感染を起こしやすく、その毒性に対する症状も重かったとのこと。
サプリメント先進国である米国の情報誌を調べると、亜鉛と抗生物質の併用のリスクについては、キレートの件には触れず、むしろ腸内細菌への影響の件について書いてあることが最近の傾向です。
なぜそうなるのか、いまいち不明なのでモヤっとしてますが、鉄サプリが腸内の悪い菌の餌になるケースはよく知られていますし、亜鉛も同じように(悪い)細菌にとって栄養素となるケースがあるのかもしれません。推測ですけどね。
亜鉛と抗生物質・まとめ
なんらかの感染症で抗生物質を服用しなければならない場合、クロストリジウム腸炎のリスクを減らすため、プロバイオティクスを必ず併用するのが一番良いと思います。
抗生物質は腸内環境を悪くするので、プロバイオティクスとの併用推奨は、亜鉛濃度云々以前の問題ではありますが。
抗生物質への耐性もそこそこ確認されているミヤリサンとビオスリー。
亜鉛サプリメントの併用に関しては、今回はマウスの実験なので、人間に置き換えた場合、どれくらいの亜鉛量でリスクが上がるのか、量の検証がなされていません。
念のためメガドーズは避けて、1日1錠(25mg〜50mg)程度にしておくのが良いのかと。
私個人的には、ここ数年抗生物質自体を全く飲んでいないので、今回の件は影響度小。
先月はじめ、夫が会社で変な風邪菌をもらってきたようで、数週間苦しんでいた時も、私はオリーブリーフエキスを飲んで家内感染を防御、全く感染しませんでした。
Now Foods, オリーブの葉エキス, 100 ベジカプセル
オリーブリーフエキスがかなり優秀とはいえ、重篤な感染症になったら抗生物質のお世話になることは確実なので、上記の点を注意したほうが良いと思います。