赤身肉で慢性炎症のリスクが上がる
高タンパクな赤身肉を多食することのデメリットは、慢性炎症体質になりやすいという点です。
赤身肉に多く含まれるNeu5Gc(N-グリコリルノイラミン酸)は、人間にとっては異物となるため身体が抗体を作り炎症の原因になることが分かっています。
カリフォルニアサンディエゴ医科大学の論文(2014)
A red meat-derived glycan promotes inflammation and cancer progression
炎症の原因物質は「Neu5Gc」
正式名称は「N-Glycolylneuraminic acid」
日本語で「グリコリル、ノイラミン酸」、グリコなので糖、つまり糖タンパクの一種です。
Neu5Gcは、人間以外の哺乳類特有のもので、人間はこの糖タンパクの発現させる遺伝子を持っていません。
人間の体内にはNeu5Gcは存在しないため、食事として体内に入ると、人間の身体はNeu5Gcを異物とみなし抗体を作ります。その抗体が全身を巡ることで、慢性炎症の原因になるそうです。
Neu5Gcは、牛肉、羊肉、豚肉に多く含まれており、鶏肉、魚には少なくなります。
ちなみに、異種間臓器移植、例えば豚の肝臓を人間の肝臓に移植すると拒絶反応が起きますが、これはNeu5Gcに対する人間の免疫反応によるところが大きいそうです。
赤身肉と発ガン性の関係
論文では、Neu5Gcの発ガン性との関連についても述べていますが、それはNeu5Gc自体が特定のガンを引き起こすのではなく、Neu5Gcに対する免疫反応としての炎症によるもので、直接的な因果関係については否定的です。
しかしながら、Neu5Gcが作れないよう遺伝子改造されたマウスを使った実験では、 Neu5Gcを含むエサを与えると、抗体が作られて全身の炎症が発生、良性の腫瘍が生じる確率が5倍になったとのこと。
実際に、人間のガン組織細胞中には、少量のNeu5Gcが存在するらしいので、Neu5Gcの抗体による慢性炎症がガンの原因の一つになっていそうな気配はします。
炎症物質は1週間で体外へ排泄される
研究チームの医師自身3名で、豚由来のNeu5Gc水溶液を飲んでみるという人体実験を行っています。
Neu5Gcの体内濃度は、摂取後2日後がもっとも高く、その濃度は摂取前の2倍から3倍。
4日後から8日後には、ほとんど摂取以前のレベルまで戻ったとのこと。
赤身肉は、効率の良いタンパク質の摂取源ではありますが、だからと言って毎日牛肉のステーキというのは、慢性炎症体質へまっしぐらになりそうなので工夫が必要かと思われます。
食事としてとった身体に良いはずの栄養素が、異物として認識され、抗体を作って炎症の原因になるという仕組みは、リーキーガットによる炎症が起こる仕組みと同じです。
未消化のたんぱく質は、身体にとって悪さしかしないので、リーキーガットの治療の4Rは意識しておく必要がありますが、水溶液でも反応が出るということは、消化力が高くても影響を受けていそうですね。
食べる頻度は「鶏肉>豚肉>牛肉」がベスト
どの食品にどれくらいのNeu5Gcが含まれているのでしょうか?
サンディエゴ医科大学のプレスリリースに記載がありましたので転載します。
Neu5Gc intake if eaten at daily recommended servings Total milligrams
Cod 27
Salmon 810
Tuna 27
Chicken 27
Turkey 27
Duck 27
Milk (cow, 2%) 711
Milk (cow, raw) 711
Butter 45
Cheese (cow) 600
Lamb 4,860
Pork 5,130
Cheese (goat) 5,544
Beef 11,610
Beef, lean portion 9,720
Beef fat 10,260
これを見るとダントツ多いのが牛肉だとわかります。
牛肉の半分くらいが羊肉と豚肉。
ここには記載がないのですが、牛肉よりも多くなるのがモツ、つまり内臓だそうです。
この研究より前は、赤身肉の多食が発ガン率を増加させるとは言われいたものの、その原因は調理中に発生するニトロソアミン(焦げた部分)や、脂肪酸の質的な割合(食事全体から見てパランスが悪くなりやすい)など、肉そのものよりはその食べ方による原因とされていました。
しかし、肉自体にも炎症の原因はあるということです。
赤身肉を食べる際の工夫
さて、これを踏まえて食事をどうするか?を考察してみます。
・食べる回数、頻度を工夫する。
例えば、鶏肉、魚は毎日OK、豚肉・羊肉は2、3日おき。牛肉は羊、豚より頻度を下げる。モツ、レバーは1週間に1度など。
・抗炎症効果のある野菜と一緒に食べる。
ほうれん草、セロリ、ブロッコリー、にんにく、玉ねぎなど
・抗炎症効果のあるスパイスと一緒に食べる
クローブ、シナモン、オレガノ、ターメリック(カレー粉)、胡椒、生姜など
昔から、肉を食べる際にはスパイス、ハーブが多用されてきました。
付け合わせとして、野菜を一緒に食べることも当然のことのように習慣として根付いています。
スパイスやハーブなどを使って、悪いところを消したり、野菜で足りない部分を補ったりして赤身肉のデメリットをカバーする。
美味しく食べるという観点からも普通のことです。
家禽類(鶏肉)よりも、家畜(牛・豚)の食べる頻度が少なくなるのも、太古の人類が手に入れてきた食肉を想像すれば、なんとなく腑に落ちます。
炎症が起こりやすい、起こりにくい、つまり、抗体が出来やすい、出来にくいという体質の差もありますから注意してください。
私自身は、以前も書いたとおり、γグロブリン高めでA/G比があまりよくない、炎症の起きやすい体質なので、肉を食べる頻度はローテーションさせています。
慢性炎症についてはこちらもご参考ください▼
アンチエイジングは抗炎症力!健康なお年寄りになりたければ炎症を抑えるべし | ビタミンアカデミー
赤身肉やレバーが、鉄分やビタミンB12、たんぱく源として優れていることは間違いありませんが、どんな食品にもメリットとデメリットがあります。
前述のとおり、1週間もすればNeu5Gcは体内から抜けるらしいので、牛肉のステーキ、もつ鍋、レバーなどは、1週間に1度程度にしておくほうが慢性炎症対策になるかも。
全ての食品について言えることですが、これさえ食べていればオッケーというものは存在しません。
その食品自体が悪いわけではなく、栄養素の効果を最大限に生かす食べ方を工夫すること、結局食事の基本はここですね。