高血糖だとビタミンCの効果が落ちる理由
昨日の記事が、糖質制限に対するアンチテーゼになっては不本意なので、
過剰な糖分は良くないってことで、分子レベルでDisっておきますw
ビタミンCの体内での代謝
ビタミンCは、自分が身代わりに酸化されることで、あらゆる酸化ストレスから身体を防御してくれます。
酸化される前のビタミンCを「還元型ビタミンC(アスコルビン酸)」
酸化された後のビタミンCを「酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)」といいます。
身体に入ったビタミンCはあっという間に酸化されて、酸化型ビタミンCとなります。
酸化されてお仕事終了〜、お疲れ様〜、とはなりません。
「酸化型ビタミンC」もまだまだ抗酸化力を発揮します。
その仕組みなんですが、「酸化型ビタミンC」は、細胞内に入って、グルタチオンというタンパク質の力でもう一度「還元型ビタミンC」に戻ります。
酸化、還元は、基本的に電子のやりとりなんで、この辺はわりと簡単なんですな。
酸化型ビタミンCは、細胞内で還元型に再度戻ることで抗酸化能力を取り戻し、細胞内のミトコンドリアや小胞体に対して働いてくれています。
ビタミンCの専用窓口 グルコーストランスポータ
その酸化型ビタミンCが、細胞の中に入るとき、専用の窓口があります。
その専用窓口を、グルコーストランスポータ(GLUT)といいます。
「グルコーストランスポータ」という名前の通り、これ本来はグルコース、つまり「糖」が細胞に入るための窓口です。
つまり、糖と酸化型ビタミンCは、細胞の入り口を共有しているということです。
窓口を共有しちゃってるので、当然のことながら、糖が多いとビタミンCは細胞の中に入れません。
実際に、糖尿患者では、血中の酸化型ビタミンC濃度(デヒドロアスコルビン酸)が優位に高い。血液中の過剰な糖のせいで、細胞の中に入れなかった酸化型ビタミンCがあふれちゃってるわけですな。
酸化ストレスに弱く、大量のビタミンCを必要としているミトコンドリアは、細胞の中にいます。血液中に糖が多いと、酸化型ビタミンCは、ミトコンドリアの元へたどり着けません。
女性のみなさま、シミ予防にビタミンC飲んでも、甘いもの食べてりゃ効果は半減します。
スイーツ好きの美容家ってのは、高所恐怖症のトビ職みたいなもんで、「ありえへーん」と突っ込んでよろしいかと。
ブドウ糖液糖たっぷりのビタミンC飲料。
アスコルビン酸の酸味を抑えるために、グルコーススパイクが起きるレベルの糖分が添加されています。効果はオフセットどころか弊害のほうが多そう。
まさか、うちの読者にこれが効果あると思ってる方はいないとは思いますけどねぇ。
脳へのビタミンC供給も邪魔する高血糖
脳もビタミンCの濃度が濃い臓器です。
濃度が濃いってことは、必要とされる量が多く、優先度も高いということです。
脳でビタミンCが不足すると、気力が低下、ストレス耐性が低下します。
やる気ホルモンのノルアドレナリンがドーパミンから合成される際に、補酵素のビタミンCが必要だからです。
脳の入り口には血液脳関門という関所がありまして、変なものが侵入しないようフィルタリングしてくれております。
脳でもグルコーストランスポータの特別窓口が用意され、酸化型ビタミンCだけが通過可能です。
酸化型ビタミンCしか、脳関門を通れませんので、高血糖は、脳へのビタミンC供給において相当不利な状況です。
糖尿病患者が、うつ病の確率アップなのは、この辺にも理由がありそうですね。
砂糖は脳の栄養とか、言ってる場合じゃないですよ。
ビタミンCは食後が効果的な理由
糖と酸化型ビタミンCの専用窓口「グルコーストランスポータ」は、普段はシャッターが下りてます。
スイッチをポチっと押して窓口を開ける役目はインスリンがやっております。
ですので、インスリン全くない状態は、窓口が開かないので困りもの。
普通に食べてれば、インスリンが出ないということはないので、通常の食事で心配する必要はありませんが、この辺の仕組みを考慮すると、ビタミンCは、空腹時よりも食事後に飲んだほうがより効果的とは言えそうです。
高濃度ビタミンC療法によるガン治療
ビタミンCを点滴する高濃度ビタミンC療法で、がん細胞をやっつける仕組みも同じ原理です。
がん細胞はエネルギー源として酸素を利用しない代わりに、大量の糖を必要とします。
糖の入り口であるグルコーストランスポータが、間違ってビタミンCを通過させちゃう。
通過したビタミンCが猛毒の過酸化水素を発生させるので、がん細胞は死滅。
正常細胞なら過酸化水素は酵素であっという間に分解されちゃうので無問題なんですけど。
実際の臨床では、高濃度ビタミンC療法が効く人と効かない人がいるらしく(むしろ効かない人のほうが割合的には多い)、まだまだ万能な治療法ではなさげ。
グルコーストランスポータが、糖と間違ってビタミンCを取り込むことが前提なので、もしかしたら背景に糖が影響しているのかもしれません。
どの病気でも同じですが、ある治療法が、効く人と効かない人がいます。
その違いはどこにあるのか?、日本中の病院、医療関係者が横つながりで連携し、患者の基本的な身体情報と食事内容、栄養状態などを記録して、ビッグデータを収集、解析すれば、かなり利用価値の高い情報が得られるのではないかと、個人的に思う次第です。
今後の医療分野でのIT技術の活用に期待したいところであります。
ビタミンCとグルコースはそっくりさん
そもそも、なぜビタミンCと糖の入り口が一緒なのかというと、ビタミンCの構造と糖の構造はそっくりなのです。左がビタミンCで右が糖(西脇俊二「ガンが消える!」より)
どれくらい、ビタミンCと糖が似ているかというと、血糖値測定器が、ビタミンCを糖と間違って誤検知するくらい。実際に高濃度ビタミンC療法で血糖値が見せかけの上昇をしております。
よくよく考えてみれば、人間以外の動物は、体内でビタミンCを合成しますが、その原料はグルコースです。
ビタミンCサプリメントのアスコルビン酸は、トウモロコシやジャガイモから取られた「でんぷん」が原料です。
ビタミンCと糖、お笑い芸人で言うところの「キャラかぶり」なんですよ。
糖の存在感が増すと、ビタミンCは出る幕がなくなります。
ビタミンCを効かせたいなら、糖分は控えるべし。
これが分子栄養学的な常識となりますので覚えておきましょう。